戦争をやってないけどいま戦時/明石順平「アベノミクスによろしく」集英社インターナショナル新書

アベノミクスによろしく (インターナショナル新書)

「アベノミクスでほんとうに景気がよくなってるの? なんだか全然実感わかないんだけど。」

「よくなってるよ、実際、株価は連日の最高値(1)。雇用は改善して新卒の就職率もすごくいい。失業率が下がり、有効求人倍率も上昇している。正規社員も増えた(2)。実際に恩恵を受けている人も増えている。円安で輸出企業も儲かっている(3)。企業は3年連続賃上げ2%達成している(4)。GDPだって民主党時代に比べて大幅に伸びている(5)。これだけ証拠が揃っているのに、どうして君は実感ないなんていうの? 君の努力が足りないんじゃない?」

「えーでもーなんかー社会は閉塞感でいっぱいだし、なにかあったらすぐ叩きあうし・・・社会の息苦しさは増していく一方だし(A)」

「それ、多分、アベノミクスとは関係ない」

「あとさ、日本の借金は日本国内から借りてるからなにかあっても大丈夫っていうけどほんとうなの? 日本には資産がいっぱいあるから売っちゃえば借金が軽くなるとか(6)」 

「だいじょうぶだよ。公共財とか外貨証券、年金資金、出資金、たっぷりお金持ってるよ(6)」

「でもでもでもー、ブラック企業とか残業代ゼロ法案とか見ると(7)、会社にすり潰されるだけの人生って感じがするし、実際給料の手取りは減ってるし(8)、貯金だって取り崩してかないとやっていけないし(9)」

「うーん、それはやっぱり君がいる環境がよくないんじゃない? 転職したら? いますごく求人多いよ。僕自身は結構アベノミクスの恩恵受けてるけどね」

「えーずるい!」

「ずるいってなんだよ!僕の努力の賜物だよ!」

以下、地獄絵図。

わたくしにもアベノミクスはございました。思い返せば2012年の総選挙の前日、思いったってドルをちょっこし買って2年寝かしたら1.5倍にふくれあがりました。そしてその膨らんだ分を日経ミニでつるっと蕩かしたのは猫ちゃんにも内緒の黒歴史。あのとき、ドルだけじゃなくて株も買っておくべきだったんだよね。買ってそのまま5年間、塩漬けにしておけばよかったんだよねぇ、あぁシクった、やれシクった、アラフォーの5年間なんてあっという間のことなのに、どうしてそれをしなかったんじゃろう。2012年頃、「政府が株価をあげるっつってんだから、是非なんて問わず、だまって株買っておけばいいんだよ!」という御本が何冊も出ていましたが、なるほど、それってこういう意味だったのですね、と今になって気がつく。大人になって気がつくことってたくさんある。

それはさておき、上のような疑問を一発で、ロジカルに正確な数字で解明してくれる情報はないかと思っていたところ、ツイッタでどんぶらこっことこの新書のお話が流れてきたので購入した次第。大人だったら2時間弱で読める内容なのでご興味ある方はぜひー。いま、書店で平積みにもなっていると聞きます(どうして電子書籍で出さなかったの、集英社さん!!)。投票日前に書店へGO。なお(A)の時代の閉塞感はアベノミクスとほんとに関係ないです、社会の変容の一端です。

というかですね、この本を読み終える頃には、働く人間としては「アベノミクス・・・・・きえええええー(猿叫)」ではなくて、「経団連・・・きええええええーー(猿叫)」となると思います。残業代ゼロ法案って、おもったよりも相当過酷なんですけど、それでみんな息していけるのかしらどうかちら? 月末最終金曜日にプレミアムフライデーを持ってくるとか、経団連の人たちって仕事したことない人たちで構成されてるんじゃないかなーっていう疑いが日に日に濃くなっていきますよ。

そんなことよりも一番お伝えしたかったのはこちらのグラフです。
財務省作成 我が国の政府債務残高の名目GDP等に対する推移(http://www.mof.go.jp/comprehensive_reform/soan_gaiyou.pdf)

えっ、我が国、太平洋戦争末期並に末期借金状態なの? だいじょうぶ!?

HIS証券のこの解説とかがわかりやすいかも。

それはともかく選挙が近づくとこれを読み返したくなるよね、高村薫が描く六ケ所村はじめて物語☆

新リア王 上

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