樅の木は残ったウィルスはなかった/映画「グエムル-漢江の怪物(原題 괴물)」

 

韓国出張の多い友達と久しぶりに会った。映画パラサイトの話をしながら愉快なランチをいただいたあと、「このあとうちくる(ウィンク☆)」「行っていいの?(ポッ)」と小芝居してから我が家で映画を見た。泡っとしたお酒をあけて、ソファ用テーブルを挟んで二人で仲良く並び、きゃぁきゃぁ声をあげながら見た。ソン・ガンホ若いー。天才子役現るー。漢江のハゼドン、よっ、いい造形ー。グエムルの後は引き続きアマゾンプライムビデオで「サ道」第一話を見た。ジルベール(磯村勇斗)のいい体を見て確信したのですが、テレビ東京は人口の厚みのあるわたしたち世代の女性を癒やすために予算切ってくれてんだな、と。まぁやりすぎないように。こんなに肌色すぎるタオルでは、見る側の心臓に悪うござんす。

 

それはさておきグエムル、韓国語で「モンスター」の意味。2007年公開作品。ハングル読める人と韓国映画を見ると話の理解が深まります。韓国事情に明るい彼女の解説を聞きながら「なるほどこの映画のここはそういう背景で、ほほぅ」「ところでいま、日本語のまんまの『銅メダルを取ったんだ』ってお父さん言ってなかった? 私の空耳?」「言ってた言ってた!」などと言語講座も開催してくれた。ありがたい。

そんな彼女が「パラサイトを見た日本の観客が半地下にすごく驚いているのに驚いた」と言っていた。「あれはほんとうに普通にある賃貸物件の形式なんだよ」と。「邦題のサブタイトル『半地下の家族』は、親切心でつけたんだろうけど、半地下に焦点が当たりすぎでどうかと思う」とも。わしもそう思う。原題があれだけきっぱりしているのに、なぜワンクッションを置こうとするのか謎。

漢江の怪物(ハゼドン)と接触したソン・ガンホは、ウィルスに感染しているに違いないと韓国の厚生労働省的な組織に隔離されるんですが、「おれは感染してないぞ!」とソン・ガンホは脱走を試みます。ソウルでは感染者狩りが始まり、街行く人は全員マスクをし、激しい咳をする人間を避け、少しでもおかしな挙動をすると嫌がる態度を隠さない。空港では高熱の人間をサーモグラフィーで探し出し大騒ぎに。ええーーーとーー、これ、2020年2月の東アジアを舞台にした話でしたっけ? ものすごい既視感にくらくらする。コロナウイルスが猛威を振るう今、みんな一度見てみるとよいのではないでしょうか。

グエムルは公開当時に見たことがあるはずなんだけど、細かいところをすっかり忘れていて、またその時代よりも、お隣の国の情報をいろいろと見聞きしていることもあり、さらに自分が単純に年齢を重ねていることもあり、より感情移入して見ることができた。

大学は卒業したけれど就職に失敗したフリーターの弟、アーチェリーの全国大会で銅メダルを取るくらいの実力のある優秀な妹、ちょっと頭が足りないと馬鹿にされて続けてきた長男ソン・ガンホ、そんな三人の子供を公園の売店業でなんとか大人に育てた父親の苦労を思うとふええ。パラサイトでもソン・ガンホの奥さんがなにかのスポーツでとったメダルが登場するけれど、ポン・ジュノ映画の「スポーツができる家庭」という描写に震える。そして妹という存在。

パラサイトを見ていて、韓国語の「オッパという単語がかわいかったけど、あれはどういう意味?」と聞いたら、「あれはおにいちゃんって意味なんだけど、日本語でこれにあたる単語はないんじゃないかな」、へええ。「街角で待ち合わせした女の子のところに彼氏がやってきて、その女の子が『オッパー!!!』と嬉しそうに手を振って駆け寄っていく姿を見たことがあるけど、そういう単語かなー」、それ、パラサイトを見る上ですっごく重要な情報!!!

そういう細かいところを知ることが出来、大変有意義な映画鑑賞回となりました。次はパラサイトでやりましょう。

2 COMMENTS

ふなき

本日、韓国出張から帰ってきた同僚の話ですと、空港だけでなく、ソウル駅などのターミナル駅にもサーモグラフィーが設置され通行する人の体温を測定、往来でくしゃみや咳をするとみんなが注目、道行く人はみなマスク着用、立体裁断のマスクが「防疫マスク」として売り出されすぐに品切れ(一方でギャザータイプのマスクは比較的入手しやすい)、等々の事象が出ているとのこと。みな外食もせず、会社では来客へのお茶出しもしない(外から来る人と接触しないため)。
グエムルの描写が時を経て現実になったようです。
ポンジュノは預言者か何かだったんでしょうか。

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ukasuga

ターミナル駅でのサーモグラフィー、来客へのお茶出しもなしとは! 徹底してますね。コロナウイルスについてはこのサイトで状況追ってますが、ウイルスの一帯一路構想なのかな・・って感じでひえええ・・
https://gisanddata.maps.arcgis.com/apps/opsdashboard/index.html

ポン・ジュノは預言者でもあり、オスカーの監督賞受賞者でもあり、やったぜ! 俺たちのポン・ジュノ!!! オスカー四冠おめでとう!!

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