秋高しゴールテープは虹色に/樋口耕太郎「沖縄から貧困がなくならない本当の理由」/宮古上布の工芸館で

沖縄から貧困がなくならない本当の理由 (光文社新書)

 

お時間ありましたらこちらの感想をまずお読みください。昨日、本の読み途中で書いたブログです。お時間ない方のために抜粋いたしますね。

第一章の「オリオン買収は何を意味するのか」を読んでいるそばから、うわあと小さい声が漏れてしまいます。那覇空港から離れた市街地になぜ免税店「DFSギャラリア」があるのか不思議に思っていましたが、実際ここで買い物をしたこともありますが、第一章六節「沖縄を変えた1995年9月4日」を読み進めたあたりから、わたしがDFSで買い物できた沖縄振興特別措置法とはどんなものだったかようやく理解し、掌に嫌な汗がでてきました。

こういう論調で始まる新書なのです。同調圧力が強い沖縄での生き辛さ、イノベーションの起きづらさ、またそんな環境で育った優しい消費者に支えれた強すぎる地元企業が県外ではまったく太刀打ちできないことなどがつらつらと書き連ねられていきます。なんと!

 

宮古島で、宮古上布のすべての工程の実演が見られる工芸館に行ったことがあります。宮古上布を砧でうち、艶を出す工程などを見学させてもらいました。大きめの槌でごとんごとんと上布を叩き続けるとそれはそれは素晴らしい艶が出て、薄い生地に仕上がるのです。室町時代に生まれた世阿弥の能「砧」は、まさにこの「砧うち」という動作に女の情念を表現させた名作です。で、それはいいのです、能の話は脇においといて。

その室町時代から伝わる砧うちをいまも守って宮古上布が完成するわけですが、その工程を見ながら「途中で技術革新とかなかったのかな?」と気になったのです。

絶海の島の産業とはいえ、優れた道具や技術が入ってくるチャンスやそれを取り入れる機会はあったと思うのです。なのに、なぜ、この古式ゆかしいというか古色蒼然とした室町時代の技術をいまだに使っているのか。「いやいや、あの砧うちででた艶こそが宮古上布なんですよ!」というご意見があるのも理解しておりますが、効率化や技術改良のチャンスはなかったのかな、と。

また織手の給料と市場末端価格がまったく折り合いが取れていないことも気になりました。宮古島で最低賃金に近い給料で織っている女性が、自分が織った布が銀座の高級呉服店の店頭で三百万近い値段で売られているのを見たらなにを思うのかしら(↓ こちら二百八十万ですって)。織手の地位向上や問屋との関係改善など働きかけなかったの? 戦前ならいざしらず平成三十年になのに(当時)、と素朴に思ってしまったのです。

その工芸館には他県から移住した女性がいたけど、慣れぬ土地でたいへんなことが多数あるのではないかしら。与那国織を見に与那国まで行ったときは、もっと自由でみんな好きなことをやっている印象だったけど(多分、外洋がなお近いからだと思う、台湾のほうが近いし)、いくら好きなこととはいえもう少し金銭的に報われてもいいのでは?

といった疑問が、この本を読んだらなんとなく理解できてしまった。沖縄では「出る杭は打たれ、やがて無視される」という人間社会ががちっと出来上がっているのだ。

しかし振り返ってみてほしい。この強すぎる同調圧力や予算を打ち込んで産業を維持させようとする話は、沖縄県だけでなく日本中で起きている問題ではないか。補助金をじゃぶじゃぶ浴びせ、ずぶずぶに甘やかされ技術革新をせず新しいことにもトライせずじわじわと衰退している産業などいくらでもあるではないか(先日、汐留で見たレーザーカッターで螺鈿を刻み新しい世界を生み出した螺鈿細工作家さんが、地元で大変な圧力を食らっていないことを祈る)。

つまり、沖縄と日本は入れ子で双子なのだ、ガガーン!!! 

沖縄の問題はわたしたち日本の問題なのだ! ガガーリーン!!!

 

という発見と理解の八合目を過ぎ、読了のゴール地点へ向かって続きを読み始める。ページをめくり、さらに打ちのめされたり掌に嫌な汗が出ることになるのかと身構えて読み進めていくと、あれ、あれれ? そしてゴール、ええーー? 筆者が伝えたかったのはこれだったのか! 

なんというのでしょう、読書気球「社会問題号」に乗せられ国際政治問題・政府の予算分配などの薄暗い雲の中をくぐり抜け、島の人間関係を俯瞰し、これは日本の宿痾ではないかと気が付かされる峠を越えて、そっと降ろされたゴール岬はまさかの虹色のゴールテープで彩られておりました(LGBT的な意味じゃないです)。感想を一コマで表すとこんな感じです。


※出典元

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