黒南風やあんとくさまのおわす海/能舞台 奥川恒治「大原御幸」/諸星大二郎 妖怪ハンター 三部作

GINZA SIX の地下三階の観世能楽堂で。

壇ノ浦の合戦で入水するも源氏方に助けられ生き残った建礼門院。京都大原の寂光院で菩提を弔うため静かに暮らす彼女のもとに、後白河法皇が訪れ、そのときの有様を語るという「平家物語・灌頂巻」を舞台化した作品。大変動きの少ない静かな能。

後白河法皇が純粋に慰問のためにきたのならいいのだけど、もしかして興味本位でやってきたとしたら、あたい、許さない! 建礼門院の静かな暮らしを「ねぇねぇいまどんな気持ち?」などと邪魔しに行ったのだったら、あたい許さない! 

寂光院で静かに暮らす建礼門院は、まるで、東北新幹線が停まるどこかの駅でひっそりと暮らす矢崎滋みたいじゃないですか。女性週刊誌では都はるみとひっそりと暮らしているとの報道もありましたが、そんなことも思い出したりした。ひっそりと暮らしたいというひとはひっそりとさせておこうよ! そうやって俗世からちょっかい出すのやめたほうがいいんじゃないかなー?

また安徳様入水のくだりでは、どうしても諸星大二郎の「海竜祭の夜 妖怪ハンター 」のあんとく様のあの見開きシーンがチラチラチラチラしておりまして、「こんな悲しい能舞台を見ているというのに、思い出すのがあんとく様と矢崎滋かよ」という、なんかもう私の教養の浅さというか薄さといったものを感じさせられた日曜の午後でございました。

あんとく様を知らない人は、googleの画像検索でちらっと見てみるといいですよ。たまに夢にでてきますよ!

 

諸星大二郎の妖怪ハンター

諸星大二郎の妖怪ハンターという作品は、異端の考古学者・稗田礼二郎が日本各地の様々な場所を学術調査で訪れ、その地の歴史や伝承などを独自の視点で再検証し、その結果、超次元的・超自然的な事件に遭遇していく、そう、コナン君の行くところ殺人事件が起きるように、稗田礼二郎行くところ必ず超常現象が起き地元住民はえらい目にあうのです!

塚本晋也監督で沢田研二主演で映画化もされています。

ヒルコ 妖怪ハンター [レンタル落ち]

さて、その中でもトラウマ度の高い名作「海竜祭の夜(1982年発表)」を収録した「海竜祭の夜」は紙の本で前の世紀に発行されたものです。収録作は表題の「海竜祭の夜」「ヒトニグサ(1982年)」「黒い探究者(1974年)」「赤い唇(1974年)」「生命の木(1976年)」「幻の木(1987年)」「花咲爺論序説(1985年)」「闇の中の仮面の顔」「肉色の誕生」。

海竜祭の夜 妖怪ハンター (ジャンプスーパーコミックス)

その後、ヤングジャンプ「稗田礼二郎 妖怪ハンターシリーズ」として天と地と水の三部作が再編して発行されます。文庫版でもいまも購入できますし、電子書籍でも買えます。この傑作は当然「水」に収録されていると思い、大きい絵柄で見たくて日曜の夜に「水の巻」を買ったのですよ、そしたら入ってなかったのですよ、ガッデム!!

妖怪ハンター 3 水の巻 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)

どこに収録されているかといいますと、「地」の巻でした。ぎゃふん! 「地」の巻にはみんな大好き「おら、ぱらいそさ行くだ」の「生命の木」も収録されておりますよ。

妖怪ハンター 地の巻 (集英社文庫)

あぁっ、ばかっ! 面倒臭がらず、紙の本を本棚から引っ張り出して収録状況を確認するべきでした。「水」の巻は稗田礼二郎の生徒たちの話も多く、「ザ稗田礼二郎シリーズ!!という印象は薄いかもしれません。とはいえ、借金取りに追われ港町に流れ着いた男と女の話「うつぼ舟の女」や、「七福神はほんとうは六福神だったんだ、な、なんだってーーー!」の「六福神」、補陀落渡海を描いた「帰還」など、すべての作品の決めごまのひとつひとつがトラウマになっているのですから、ほんとうに諸星大二郎先生って偉大ですね!

ところで大きい紙面で読みたいのでこの三部作を電書版で書い直そうかしら、そして文庫版は甥っ子に読ませ何らかの薫陶を授けるべきか、しかしこの薫陶は通じるのかしら、「◎◎のパクリじゃん」などと軽々しく返されるのではないかしら、「違う、◎◎が諸星大二郎にインスパイアされてるんだよ、ちゃんと読んで」「あーもうーうざいからもう黙ってて」などと心がへし折れる応対することになるのかしらと悩んでいるところです。

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