「エデュケーション 大学は私の人生を変えた(タラ・ウェストーバー 原題 Educated: A Memoir )/映画「はじまりへの旅(原題 Captain Fantastic)」

エデュケーション 大学は私の人生を変えた

都議選だし、雨だし、どこに行くってわけでもないし、ということで読書の日曜日。村井理子さん翻訳の「エデュケーション」を読んだ。概要はAmazonから。

1986年、米国アイダホ州生まれ。
両親が病院、公立学校、連邦政府を頼らないサバイバリストだったため、自宅で助産師の手を借りて生まれた。9歳まで出生届が提出されていなかった。学校にも行かず、医療機関も受診せずに育った。10代半ばに、大学に進学した兄の影響を受け、大学に通うことを決意。独学で大学資格試験に合格する。2004年、ブリガム・ヤング大学に入学。2008年に同大卒業(文学士)。その後ゲイツ・ケンブリッジ奨学金を授与され、ケンブリッジ大学トリニティカレッジにて哲学で修士号を取得。ハーバード大学に客員研究員として在籍ののち、ケンブリッジに戻り、2014年、歴史学で博士号を取得。2020年よりハーバード大学公共政策大学院 上級研究員。
2018年に発表した本書は主要メディア、ビル・ゲイツ、オバマ夫妻に絶賛され、全米400万部超の記録的ベストセラーとなった。ニューヨーク・タイムズ紙のベストセラー・ランキングには130週以上ランクインしている。著者は2019年、TIME誌の「世界で最も影響力のある100人」に選出された。

連保政府を頼らないサバイバリストの両親は、モルモン教徒でもあり、モルモン教は日本では「末日聖徒イエス・キリスト教会」と呼ばれています。ざっくりまとめると「いつか最後の日がくるから、その日に備えて生きよ」という教義で、宗教に明るくない自分からしてするとノストラダムスの大予言的なものなのかと短絡的に解釈してしまう。

しかも「その最後の日がくるから」と備えるのは、銃規制のゆるいアメリカでのこと。1999年12月31日、2000年問題が発動して世界が終わることを信じ、父親は燃油を備蓄し、桃のシロップ漬けを夏中かけて作り、大量の金と銀を買い求める(1999年夏の金価格は1トロイオンス 326.25ドル、今1800ドル前後だから、お父さん戦略間違ってなかったよ、え、そうじゃない?)し、ライフルだって買っちゃう。母親はホメオパシーとレメディでどんな大怪我も骨折も治そうとする。ついにはレメディ薬局として大成功するのだが、そこに至るまでに失われたものの大きさは考えない。「全部イルミナティのせいだ!」と子どもたちに『普通』の教育も受けさせないし、出生届すら出してない。ケンブリッジに留学しようとするタラが、出生届がないためにパスポートが発行できずあわや留学が頓挫仕掛けるあたりなど、読者のわたしですら頭を抱えた。

凄まじい、あまりにも凄まじい。最近生まれたような『毒親』という言葉で片付けるわけにもいかない、狂信者のもとに生まれた不幸な子どもというにはあまりにも過酷な環境で育ったタラ。
「教育って素晴らしいね、そんな子供時代を過ごした女性でも、人生がこれほど変わるんだから!」とほがらかに感想文をまとめるわけにもいかんじゃろう、これは。

なぜか日本Amazonでは『この商品に関連する商品』にハーレクイン・ロマンスが列挙されてたのですが(マイ・フェア・レディ的な教育つながり?)、原書で調べると「ザリガニが鳴くところ」が出てくる、これも読まないと。私が考えるにこの本が参考になりそうな気もします。

ファンタジーランド (上)(下)セット

「ファンタジーランド」の著者は、前々回の大統領選のあと、「ほらね、トランプが大統領になるわけですよ、私が書いた内容が正しかったわけですよ」とフフンと鼻を鳴らしたそうです。機会があれば読もう、上下本だけど。

 

「エデュケーション」に戻ると、ハーバード大学に在籍しているタラの元に、はるばるアイダホから両親がやってくるシーンがある。

田舎者のお決まりのルールで、デニムのシャツと全米ライフル協会の生涯会員キャップをかぶった父は、ハーバードではとても場違いに見えた(後略)

いろいろときついシーンがあったけど、私は物語の後半に出てくるこの「全米ライフル協会の生涯会員キャップ」が一番きつかった、胸が詰まった。

このキャップのシーンから、私の子供時代の記憶がバッと蘇ってきた。小学校のとき、いつも薄汚れた服装で通学していた子がいたことを思い出したりもした。彼女たちは、心細い作りの小さな木造の家に住んでいた。家があることを隠すかのように高い木々に囲まれていたその家は、薄暗くてジメジメしていそうなのが通学路から見ても感じられた。彼女の弟さんが、別の土地で家庭を持つような年になってから、その家を解体し更地にしていったという話を聞いた。彼にとってのあの家はどんなものだったのだろう。

 

こういうサバイバリストの映画があったよなとこちらの映画を見直してみた。

はじまりへの旅(字幕版)

作品概要は映画.com から。

ビゴ・モーテンセンが大家族の父親役を演じ、森で暮らす風変わりな一家が旅に出たことから巻き起こる騒動を描いたロードムービー。
現代社会から切り離されたアメリカ北西部の森で、独自の教育方針に基づいて6人の子どもを育てる父親ベン・キャッシュ。厳格な父の指導のおかげで子どもたちは皆アスリート並みの体力を持ち、6カ国語を操ることができた。さらに18歳の長男は、受験した名門大学すべてに合格する。ところがある日、入院中の母レスリーが亡くなってしまう。一家は葬儀に出席するため、そして母のある願いをかなえるため、2400キロ離れたニューメキシコを目指して旅に出る。世間知らずな子どもたちは、生まれて初めて経験する現代社会とのギャップに戸惑いながらも、自分らしさを失わずに生きようとするが……。
監督は「アメリカン・サイコ」などの俳優で、「あるふたりの情事、28の部屋」で監督としても高く評価されたマット・ロス。第69回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門の監督賞をはじめ、世界各地で数々の映画賞を受賞した。

「エデュケーション」の舞台のアイダホ州隣のワシントン州の自然が大変に美しく(国境越えたらカナダだし)、子役たちもみなかわいく美形揃い、しかもお父さんがビゴ・モーテンセン、映画映えするイケメン揃いの不思議家族の珍道中といってしまえばそれまでだけど、なぁに、このひと、リバータリアンなの? いつもの調子で作品の感想にタイトルをつけるとしたら「ワシントン州で湯を沸かすほどの熱い愛」って感じなんですけど、ホームスクーリングがかなり成功しているからいいようなものの、これも毒親物語。しかしなぜ毒親は湯を沸かしたがるほどの熱い愛になっちゃうのか、謎。

見目麗しいから「わーすてきなファンタジー★」って幸せの黄色ジャケット映画と思ってみることもできるけど、この近似値が「エデュケーション」だと腑に落ちてしまうとまた違う感想になることでしょう、なりますでしょう、そこはらほれならないと!

 

さて「エデュケーション」を映画化するなら、お父さん役はイーサン・ホーク、お母さん役はユマ・サーマンがいいと思います! イーサン・ホーク、こういう役がすごく似合うと思うよ! ガリガリに痩せて役作りしてほしい。

 

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