安易に「パーティーに着ていけます」とすすめない

ヒグマ更新、ヒーグーのとめはねっ!
このアンティーク展、楽しそうです。おコンラン様の60年代の器やらなにやらが出てるそうですが、あぁ、気になる、気になる。
着物を毎日着ている女性と話をしていて、こんな話題になった。
彼女が若い頃、勤めている会社であるセレモニーが催された。場所は帝国ホテルで、彼女は気張って紋付の色留袖を着ていった。ちょっと気張りすぎかなーと思ったけれど、その式典の主賓たちは全員タキシードを着ていたので、自分の選択は正しかったとほっとした。パーティーというのは、その内容の格もあるし、招かれた側としては、(乱暴にいうと)主賓に恥をかかすような装いで行くわけにもいかない、その場に居合わせた社会の一員としての装いが必要とされる場面もあるのだから、場や分をわきまえた相応の気遣いをしたいわよね、という話になった。
某SNSサイトの着物コミュでも似たような話題があった。
「ホテルで行われる先輩の結婚式に浴衣を着ていこうと思うんですけど、どうでしょうか?」
どうでしょうかもなにも…。ホテルという場にふさわしい装いというものがあるでしょう、ホテルの中で気まずい思いをするのはあなたですよ、あなた自身も恥をかくけれど、なによりもお招きしてくださった先輩に恥をかかすことになるからおやめなさい、という意見が多くて、私までほっとした。質問した若い女の子は、口うるさいばばぁばっかりだにゃーとうんざりしたかもしれませんが、結婚式当日彼女たちのアドバイスに間違いがなかったと感謝したことでしょう。こういう良識は大事にしたいもんです。「人を外見で判断してはいけない」といいますが、外見からにじみ出る情報ってたくさんありますから。
先の女性が参加された式典には、どうも「?」という着物や着こなしの方がいらしたそうで(ああいう式典にミュールで行くのも信じられないわ、とも言ってらした。あぁ、ここにもシリアルママが)、「多分、呉服屋さんが『パーティーにも着ていけます』ってすすめちゃうのよねぇ」と嘆き気味に。パーティーにもいろんな種類があるんだから、ちゃんとその場にふさわしい着物をぴしゃりと教えてくれる着物屋さんってのはありがたいものです。ゑり華のSさん・Hさんたちはそこらへんのことをきっちりと教えてくれるので、とてもありがたく思っています。
私はどちらかというと、自分自身に着こなしの工夫や柄あわせのセンスがあるわけでもないので、きちっとすっきり着るほうが好きです。最初は、ただ着ていられれば楽しいと思っていて、途中から「着物も洋服と同じひとつの選択肢ですから」とうそぶき(これは多分に粋がりが入っていたと思います、うまく説明できないんだけど)、そのステージを過ぎた今、作った人が安心するようなきちんとした着こなしをしたいと思うようになりました。
ごくごくあっさりした柄の着物が好きな私ですが、だからこそすっきりと美しく着ていきたい。「この糸作るのにえらい苦労が!」とか「この柄織るのにえらい苦労が!」などといちいちかみ締めて着ていきたい。そしてきちんと着られるようになってから、着崩したり自分なりのアレンジを楽しめるようにしていきたいと思うのです。
たんす貯金が布になって箪笥に戻ってくるという不思議な錬金術を使うようになって(錬金できてない…)早数年、それなりのモトを取らないといけないですし、なにしろ平たくいうとえぇ年したおねいさんですから。

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