新興の住宅地街で老いて春/映画「おらおらでひとりいぐも」/太田垣 章子「不動産大異変:在宅時代の住まいと生き方」

おらおらでひとりいぐも

74歳の老女桃子は、夫に先立たれ、娘とも疎遠の生活を送っている。その生活の中で、脳内で他者と会話をするようになる。

映画は沖田修一、南極料理人の監督。主演、田中裕子、若き頃を蒼井優、その夫を東出昌大(よかったです!)、脳内の他者を濱田岳(カムカム)、青木崇高(ちりとてちん)、宮藤官九郎(いだてん、ちょっと普通の人過ぎて俳優さんに見えなかったのがすごい)。その他、朝ドラ「エール」で奥野瑛太演じる智彦さんにラーメンの修行をつける山中崇さんや、鷲尾真知子さんも。大方斐紗子さんが「それなりだぁ」というシーンは涙がとまりませんでした。

老女の桃子さんが住むのは所沢や狭山とかあのへんの新興住宅地。一人で暮らすには大きすぎるおうちにひとりで残り、お金の無心にやってくる娘、連絡のつかない息子、たまに様子を見に来てくれるのはその息子の同級生でいまは地元の地元の警察で働いてる子だったりする。

二階の窓なんて何年も開けてなさそうで、雨戸で閉ざされている。広い、一人で暮らすには広すぎる。駅から家まではどうやらバスで移動する。地元の病院へはバスで、より詳しく調べてもらえる大学病院は車で運転していかなくてはならない距離。これが、これが老後か、これが老後の一人暮らしの姿なのか。

というわけで老後の正直不動産事情はどうなっているか、「老後に住める家がない!」という本を読もうとしたんだけど、
(183)老後に住める家がない! (ポプラ新書)

それはなかったので同じ著者の「不動産大異変」を読みました。
不動産大異変: 「在宅時代」の住まいと生き方 (ポプラ新書 お 10-3)

コロナで在宅時代となってしまった結果起きた賃貸界隈のあれこれのお話、家主の苦労、制度を知らないばかりに困窮してしまう若者、ゴミ屋敷にされてしまった家主さん、身元引受人がなく部屋を始末できなくなってしまった家主さん。本の内容は、賃貸人の悲哀と家主の苦労の半々くらいでした。しかし、ゴミ屋敷、ひぃぃぃ、恐ろしい恐ろしいなどと恐ろしがっていたらたまたまTwitterでこういうのが流れてきた。


恐ろしい。でも自分が老後、認知症になったりしてそういうゴミ屋敷生産マダムにならない保証はない。恐ろしい。

映画の中の桃子さんは、同じ家に長年暮らしてきた人らしく、たしかにものが多いけどゴミ屋敷というほどでもない、ごくごく普通の一般的な家庭の物量。それでも桃子さんがこの世を去ったあと、娘がうんざりとしながら片付けなきゃいけない量ではある。娘さん、多分、この家を売るんだろうな。まぁ、売るわなぁ、うん、売っちゃうよねぇ、うーん、家ってなんなんだろう。

田中裕子さんはチャーミングだし、映画の構成も巧みで、穏やかでともていい映画なんだけど、わたしは一体どんな老後を、というより、老いたときどんな毎日を過ごすことになるのかと考え込んでしまう作品でした。あとインフレも怖い。意外と怖いものだらけだわ。

 

メゾン・ド・ヒミコ

4 COMMENTS

ふなき

狭山の新興住宅地の実家は、まさに「駅までバス、病院までバス、大学病院まで車」です(ついでに毎日の買い物をするスーパーも車で行ってる)。さらに、お金の無心こそしませんが、実家に帰るのは年1~2回で、このレビューだけで非常に身につまされました。アマプラで見てみます。

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ukasuga

見る人が見たらロケ地の桃子さんの家がわかるのではないでしょうか。田畑智子が子連れで無心にきて「おにいちゃんばっかり!」というシーンなんて、田畑智子、もう、十分大人なのに、そう言いたくなる子供らしさがまた見につまされ。監督の描くリアリティときたら! 「南極料理人」で高良健吾に南極基地から「渋谷とかいきてえ」といわせただけのものはあります! ぜひぜひ。いいお話なのよ、ほんと。

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ふなき

気になってロケ地調べてみたら、小三まで住んでいた家から徒歩圏でした。桃子さん、たぶん、うちの家族と同じ商店街でお買い物してる!!

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ukasuga

えー!早く見てみて!!バスが何度か登場するので、馴染みのある路線がでてくるかも!!

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