母親のレシピ尋ねて三千里/「年取りと正月の料理 (全集 伝え継ぐ日本の家庭料理) 」日本調理科学会

●本全集は日本全国47都道府県、およそ昭和35年から45年までに地域に定着していた家庭料理のなかから、地域の人々が次の世代以降もつくってほしい、食べてほしいと願っている料理を、日本調理科学会の研究者が約1400品選んだものです。実際に現地に伺い、聞き書きによってつくり方の詳細を明らかにし、その工程やできあがりを撮影し記録しました。

●対象とした昭和半ばは日本人の食生活が大きく変わった高度経済成長期です。台所は板の間になり、ガスが引き入れられました。農業生産力は大幅に向上し漁業生産が高まり畜産も盛んになってきた時期で食卓はどんどん豊かになっていきました。生活の洋風化も進みましたが、食生活は地域の特徴や、保存や貯蔵の技など自給的な色彩もまだふんだんに残っていました。

●本全集は地域それぞれにある家庭料理の背景、その土地の気候風土、暦の節目にあたる行事やハレの日を解説し、それらにまつわる思い出とともに紹介しています。

●神社仏閣などの有形文化財は保存・保護されていきますが、形の残らない 食文化は時間の経過とともに失なわれていきます。地域ごとの歴史や生活習慣にも思いをはせ、 それらと密接に関わっている食文化について共通認識を持つことで地域コミュニティーも受け継がれていきます。親から子へ、そして孫へと家庭料理を残し、伝え継いでいきたい食文化の記録です。

高度成長期の食を尋ね、膨大な聞き取り調査をもとに編纂された「伝え継ぐ日本の家庭料理」というプロジェクトをまとめた全集の一冊で、ひとまず正月料理を手にとってみたのですが、すごいですわ、この本! 1ページの中にその料理の材料、作り方、その由来や背景、出来上がり写真が掲載されています。使っている器がいいんですよ、これがまた! 料理の見せ方や小鉢の使い方などに「こうきたか」などと生意気にうなってみたりしています。

全16冊のラインナップはこちら。

■ すし ちらしずし・巻きずし・押しずしなど
■ 肉・豆腐・麩のおかず
■ 小麦・いも・豆のおやつ
■ 魚のおかず いわし・さばなど
■ 野菜のおかず 秋から冬
■ 炊きこみご飯・おにぎり
■ 米のおやつともち
■ 漬物・佃煮・なめ味噌
■ 汁もの
■ そば・うどん・粉もの
■ 魚のおかず 地魚・貝・川魚など
■ どんぶり・雑炊・おこわ
■ 年取りと正月の料理
■ 野菜のおかず 春から夏
■ いも・豆・海藻のおかず
■ 四季の行事食

全巻揃えると5万円弱のようですが、昭和の食を網羅できると思ったらリーズナブルな感じさえも。蔵書するスペースはまた別で。

この本に母親が作っていた正月料理は載っていなかったのですが、長野県からはぶり雑煮(初めて聞いた! )が掲載されていました。
富山から鰤街道をわたって松本にやってきた鰤は、そのあと松本・諏訪・岡谷・伊那・飯田などへと販売され、裕福な家は一尾買いもとめ小正月まで大事に大事に食べたそうです。いまはスーパーで切り身で使いやすい形で買えるけど、そういえば年末に母親が買う鰤はもっと巨大な切り身だったなと思い出して少しじわっとしたりしました。自分でも鰤料理はいくつか作りますが、鰤が正月だけの食材でなくなっている都会ぐらしの東京砂漠、母との鰤とは重みが全然違うのです。

金沢からはかぶら寿しが紹介されていました。あれとても美味しいんだけど、やっぱりこんなに手間がかかる料理なのか!! 自分で作るのを早速断念しました。

日本全国で百貨店の半冷凍のおせち料理を食べてしまう時代ですが、どのシリーズでもいいので一冊は手にとってみてはいかがでしょうか。とても勉強になります。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください