夜の秋に球種多彩な小説家/モンゴメリ「青い城」/#猫小説

Kindle Unlimited をダラダラ見ていたらモンゴメリの知らないタイトルのご本があったので早速読んでみた。舞台はプリンスエドワード島ではなく、オンタリオ州。トロントから200kmほどのムスコカ湖近くの小さな町(というか村?)、モンゴメリ自身の1922年のムスコカ地方での休暇の体験を基に描いたもので小説の発表は1926年。

主人公のヴァランシーは29歳独身、一族でひとつの館に住んでいる。しつけの厳しい頭の固い母親、本を読んでいると「本なんて読んでどうするの?」といちいち嫌味ばかりいう親族(ひとりだけ優しい人もいる)、会うたびにつまらないダジャレを繰り出してくる小金持ちのおじさん、美人だけど頭が空っぽの同世代のいとこ・・・そんなんに囲まれて「結婚もできないし、風体も冴えないし、似合わない髪型をしろっていわれるし、こんな茶色のごわごわしただっさい長袖のドレスを着せられてそれ以外の服なんて買ってもくれなくて、私の人生はもう終わりだわ、うわーーーん!」とさめざめとしながら毎日暮らしている彼女、そんな彼女に転機が・・・・。

この小説の作者が赤毛のアンのモンゴメリだと知らずに読んだら、現代の作家が大正15年の北米大陸の女性の権利ってこんなもんだったんじゃないかと想像して書いた作品だと思っちゃう人がいるかも。それくらい生き生きとした瑞々しい筆致とユーモアあふれるキャラクター造形。ネタバラシになるのであまり詳しくはいえないのですが、ムスコカ湖畔(Lake Muskoka)の自然描写が美しく素晴らしい。物語の登場人物になってここで私も暮らしたい。

湖畔の暮らしというと、北欧のフィンランドやノルウェーなんかも同じ景色が見られそうな気がするのですが、カナダの風景は湖にダイナミックな山が追加されるので、景色の起伏が楽しいと思うんですよね。いや素晴らしい。ほんとこの景色だけ眺めて暮らしていたい。いつか行くプリンスエドワード島の旅(ちょっと大予算の聖地巡礼の旅!)にこの湖も追加して旅程を組まねばならぬ。

しかも、この物語、あろうことかびっくりするくらい気楽なロマンス小説なんです。もうね、モンゴメリさんの多彩な球種に時空を超えて読者は翻弄されっぱなしですよ。モンゴメリさん、多分、すっごくお茶目で楽しいひとだったんじゃないかしら。楽しい気持ちになる美しい小説です。お時間ありましたらぜひ~。

追記、モンゴメリの著作リスト、助かります!

 

自分のカナダ旅行振り返ってみた。楽しかった。ここで紹介しているネズミっぽいかわいらしい哺乳類、アシリパさんが大雪山系で罠にかけて捕ったのと同じ種類なんだろうな。うふふ。

 

   

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