ノートルダム大聖堂と中世美術/浅野和生「ヨーロッパの中世美術 大聖堂から写本まで」

いまちょうど考古学者であり西洋美術史の先生の浅野和生さんの「ヨーロッパの中世美術 大聖堂から写本まで」という本を読んでます。2009年の中公新書なんですが、「えっ、900円でこんなに盛り込んじゃってよいの、ローマの遺跡から16世紀初頭に完成したカンタベリー大聖堂までカバーしてるけど大丈夫、先生儲け出た?」と心配したくなる網羅性。
古代とルネサンスのあいだの長い時代におきた宗教と美術の関係を紐解いてくれる内容で、「へー、聖堂と呼ばれるものは西に入り口があり、東に向かって奥まりそこは丸く作るのか。だからいつも敷地に到着してからぐるりと回って入るんだねー」とか「あー、あの壁にある小さい礼拝堂みたいなのって一族で持つ個人礼拝堂だったのか」などなど感心しながら読んでました。

ギリシャ北部のテサロニキという街に、五世紀から六世紀に建てられたアギオス・ディミトリオス聖堂がありました。一度はモスクに改変されたりもしましたが19世紀に聖堂に戻され、20世紀初頭には大規模な調査が行われました。しかしその調査の数年後、この聖堂は火災で焼け落ちてしまったのです。そのくだりに「木造だった屋根は抜け落ちて、石の壁だけが残っている」と書かれており「ほほぅ、聖堂の壁は石組み、屋根は木造」と強く印象に残ったものです。

そこを読んだのが先週。そして今朝、ノートルダム大聖堂が火災で焼失されたとニュースを知りました。1225年に完成し、昨日の朝までずっと存在したものが焼け落ちてしまうなんて。実は私、熊本地震の起きる1ヶ月前に熊本城に行ってまして、あの勇壮なお城が地震でガラガラと崩れてしまったり、バスで渡った橋が無くなってしまった映像を見たときは膝が震えたものです。それと同じく、現地の人の悲しみを思うと胸が潰れんばかりでしょう。

街頭のインタビューで「火の粉が飛んでいるのが見えたので、テロかなと思って見に来たところです」という人がいたりしました。だめでしょう、テロかなって思ってるのにお家から出てきちゃ! なにか日本から技術支援とかできることはないのでしょうか。がんばれパリ市民!

 

いま読んでいる浅野先生の新書。大学の西洋美術史の授業半年分くらいの内容だったりするんじゃないでしょうか。とても勉強になります。

 

こちらは写真つきで解説してくれてるご本。「そもそも大聖堂ってどうやって作りましたの?」という興味から取り寄せました。川の近くにある教会や聖堂は、石を川で運べたからいいけど(ケルンとかバーゼルとかノートルダムとかだね)、そうじゃないところは牛が舗装もされていない道のような道じゃないようなところを運んだそうです。大変! 牛、お疲れ様でした! ちなみにケルン大聖堂は建設に500年かかったとありますが、途中二世紀分まるまる中断しているので実際の工期は300年だよ、とも。でも長いよね。

 

ちなみにこちらの「図説 大聖堂物語」ではノートルダム大聖堂についてこんなふうに書かれています。

首都と国家を代表する大聖堂という重要な位置づけのゆえにか、ノートル・ダムはフランス革命以前からさまざまな形での破壊を受けており、十九世紀以降に新たに作り直されたり、付加された部分が多いことに注意したい。

ノートルダムはこんな火事でへこたれたりしないよね。がんばれパリ市民!

 

おまけ。パリで暮らした日本男児のコミックエッセイ。女性のこういうコミックエッセイは多いけど、男性目線で書かれてる内容は割と赤裸々なところもあったりして面白かったです。今は日本で暮らし、フランス人女性と結婚し、一児のパパになっているそうです。表紙はこんな簡単な線画の男性がメインにあったりしますが、街の風景のイラストとかとてもうまいです。親御さん連れてパリ旅行する話が「わーん、田舎のご両親ほっこり話あるある!」でよかったですよ。

2 COMMENTS

ラミー

あれはまだ平成の初めのことじゃった。
生れてはじめての海外旅行先が、パリとジュネーヴで。
バブルが最高潮のわりに学生さんだからお小遣いは少なく!でも足だけは健康!なので、ひたすらパリを歩き回りました。
もちろん、ノートルダムにも行きましたよ。
とにかく石の彫刻と宗教画に軽く酔いそうになりつつ…それでもあのバラ窓のステンドグラスの荘厳さ、美しい建物に圧倒されました。

その建物があんなことに。

もう行くことはないと思うのですが、ぜひともまた美しい姿を取り戻してほしいものです。

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ukasuga

被害状況がいろいろわかってきて、屋根と尖塔が燃え落ちたけど、石組みのところはなんとか残ったということでしょうか。バラ窓も残っているようでなによりです。マクロンたんが「次の夏の五輪までに直すぞぉ!」と息巻いたあと、関係各社が「無理!」と即答していたのがよかったです。為政者はいつもアレ。

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