岩波にお世話になって秋思かな/先週読んだ本と映画/独ソ戦を考える

平和を享受して80年、人類は、なにかの記憶を呼び戻すかのように戦争をせねばならぬのかそうなのかと考えた一週間。

トムは真夜中の庭で

トムは真夜中の庭で (岩波少年文庫)

屋敷がみた幽霊なのか、屋敷が幽霊だったのか、幽霊だったのは僕だったのか、彼女だったのか。とても素敵な物語でした。岩波の児童文学ってきちっと読んだことがないのに気がついた。Kindle unlimited で良書が現在開放中なので腰を据えていろいろ読むことになるきっかけの一冊。

独ソ戦 絶滅戦争の惨禍 (岩波新書)

独ソ戦 絶滅戦争の惨禍 (岩波新書)

「戦争は女の顔をしていない」「ボタン穴から見た戦争」と読んで、ドイツの第二次世界大戦のことをまったく知らないことに恥じ入って読んだ。ヒトラーの「世界観」戦争というものはなんだったのか、なんでこんなバカな考えに積極的に加担しちゃったんだよとか、スターリンもたいがいだわとか、そのスターリンがドイツを一手に引き受けることで、英米に貸しを作りあの国境線を作ったのだととか。それが2022年にウクライナ戦争の原因になっていないわけがない。なんと。

ヒトラー ~最期の12日間~

ヒトラー ~最期の12日間~ (字幕版)

それでは映画で確かめようと本作を。「おっぱいぷるんぷるん」ってこれか。

原作はヒトラーの秘書を務めていたトラウドゥル・ユンゲの「私はヒトラーの秘書だった」。「若い頃の自分を諌めたい。何も知らなかったから許されるということはないのだから」という彼女の独白から始まるヒトラーとその周囲の群像劇。ヒトラーが愛犬に毒を飲ませて効き目を確認するシーンのむごたらしさ。ゲッペルスの気丈すぎる妻マクダ・ゲッベルスの最期。ウィキペディアで登場人物をそれぞれ調べながら見直したい。

顔のないヒトラーたち

顔のないヒトラーたち(字幕版)

戦後、西ドイツの多くの人が戦争の記憶、犯した罪を忘れ去ろうとしていた。そんな時、一人のジャーナリストがアウシュヴィッツ強制収容所の元親衛隊員が教師をしていることを突き止める。若き検事ヨハンは圧力や苦悩を抱えながら、ナチスがどのような罪を犯したのかを明らかにしていく

ヒトラー亡き後のドイツはどうしていたんだろうと次に見たのが本作。1963年のフランクフルト・アウシュビッツ裁判の前日譚。戦争が終わって20年も経ってない。1991年の日本のバブル崩壊から30年、そう考えると20年前って大人たちにとっては全然昔の話じゃない、「あのときはみんなそうだったのだから」と済ませたくなるけれどあまりにも近すぎる記憶。ドイツの大人たちはこの記憶にどうやって向かい合っていったのか知ることができた。

映画の内容はとても重い(若き検事ヨハンのおかげですごく爽やかに仕上がっているけれど)が、衣装・内装・家具・建築・自動車のすべてに正直目を奪われてしまった。奇跡的に経済復興を遂げた1960年代のドイツの細部の美しさよ。イームズのラウンジチェアってこの時期にはもうあったのか、とか、あれはデンマークの名高き椅子ではとか、落ち着いたすみれ色の壁紙のオフィスの端正な美しさとか、壮麗だけどモダンな設計の資料センターとか、なんて目に麗しいことか。それとこれは別、それとこれは別・・・・。

走れ、走って逃げろ (岩波少年文庫)

走れ、走って逃げろ (岩波少年文庫)
第二次世界大戦下のポーランド。ナチス・ドイツによるユダヤ人迫害の嵐が吹き荒れるなか、8歳のスルリックは、ゲットーの外へ脱出する。農村と森を放浪する過酷なサバイバル。少年は片腕と過去の記憶を失うが…。勇気と希望の物語。映画「ふたつの名前を持つ少年」原作。

ポーランドのワルシャワ・ゲットーやドイツとソ連の国境地帯の農村部の暮らしぶりがわか。パルチザンの村のアレがもうかなしすぎるし、犬が死ぬシーンもつらすぎる。「この少年にこれ以上不幸なことが起きませんように」とおっかなびっくりと読み進めた。映画はこちら。近々見よう。

ふたつの名前を持つ少年(字幕版)

ホロコースト―ナチスによるユダヤ人大量殺戮の全貌

ホロコースト―ナチスによるユダヤ人大量殺戮の全貌 (中公新書)
ヒトラー政権下、ナチ・ドイツによって組織的に行われたユダヤ人大量殺戮=ホロコースト。「劣等民族」と規定されたユダヤ人は、第二次世界大戦中に六〇〇万人が虐殺される。だが、ヒトラーもナチ党幹部も、当初から大量殺戮を考えていたわけではなかった。本書は、ナチスのユダヤ人政策が、戦争の進展によって「追放」からアウシュヴィッツ絶滅収容所に代表される巨大な「殺人工場」に行き着く過程と、その惨劇の実態を描く。

アンジェラ・メルケルは犬が嫌いだっていうけど、こういう作品に触れているとその理由がなんとなくわかってくる。彼女にとっての『犬』は愛くるしい愛玩犬ではなく、人間をかみ殺すのに躊躇しない軍用犬や警察犬なのだろう。プーチンもそれをわかっていて、犬をけしかけていたとしたら本当に意地が悪い。

このあと「愛を読むひと」 → 「ハンナ・アーレント」で一旦仕上げていきたいと思います。

愛を読むひと(字幕版) ハンナ・アーレント(字幕版)

箸休めにこれも読んでる。手塚治虫、天才・・・・。

アドルフに告ぐ 1

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