泰山木はどこへ行った/今週の本と映画、智積院の長谷川等伯全部見せちゃう展 など

泰山木はどこへ行った

自宅の近所に位置するある大企業が現在15年単位で大規模再開発をしている。

この界隈の風景もずいぶん変わった。引っ越してきた当時は、関連工場が敷地内に複数あり、大型トラックが行き交う土埃舞う小さい橋を渡らないと家にたどり着かず、駅からのルートの最適解ができあがるまでずいぶんと時間がかかった。
そんな長い道のりの楽しみは、その敷地の一角にある巨大な泰山木。夏の夜、「暗闇に丸々としたアヒルがあんなになってる!」とおもったら、白く大きな花だったと初めて知ったことがあり、それから何回かの夏、毎年楽しませてもらった。

しかしその再開発が進む中、泰山木は姿を消し、その一年後にはそこにガラス張りのピカピカのおしゃれすぎるオフィスが出来上がった。「あの泰山木は伐採されてしまったのだろう、世界にその名を轟かせる大企業といっても自然に対する態度はそんなもんなのだ、そうだそうだそうに決まった、会社のホームページで高らかに環境に配慮したなどと謳っているのに、なんてこった名ばかりSDGsめ!」ととても残念に勝手に憎々しく思っていたのです。


これは新宿御苑の泰山木

さて先日、その企業が施設の一部を開放し、地元住民が立ち寄れる機会を作ってくれていた。私も中を覗いてみた。大正時代に建てられたその建物は、美しく化粧直しをし、内部は産業遺構を見て学べるようになっていた。「大正時代の建物が空襲にも合わずなんで焼けずに残ってるんだ?」と不思議に資料を眺めていたら、そこにいた社員さんがこの建物の成り立ちを詳しく説明してくれた。

戦時中、東京も空襲されるようになった頃には、白亜の壁を煤などで黒く塗り、目立たないようにしていた。米軍は終戦早々にも都心のよさげな施設は接収するつもりでいたので、焼夷弾や爆弾を落とさないエリアが少なからずあった。そのひとつが軍事関連の施設で、この建物も陸軍の施設が隣にあったため関連施設と思われたのか焼かれずに済んだ。終戦後、早速アメリカ軍に接収されて、9月にはこの建物で作られたものがアジア中で販売された。

「といったことがあって、この建物は残しましょうと都と新宿区と協議して大規模再開発をやっている最中なんですよー」

知らなかった! 大規模再開発たるものの理由がやっとわかりました。さらに今後の再開発の予定などを聞かせてもらい、そのプロジェクトを担当されているらしいその方に「私はいまのこの一帯の変化がとても好きです(土地の値段もあがったことでしょうし、私は賃貸ですが)、これからも楽しみにこの変化を見ていきたいです」とお伝えした。ついでにひとつ質問させてもらった。

「あの道の角、工場があったところに大きな泰山木の木があったじゃないですか。あの木はどうなったんですか?」
「あーあの泰山木! 埼玉の工場の敷地に移植したんですよ! 元気にやってますよ」
「なんと! 今週一番いいお話をここで聞けました!」

ほんとうに、この一週間で一番ほっとした知らせでした。「名ばかりSDGsめ!」などと失礼な思い違いをしていたことを深く恥じ入るばかりです(そういうところ良くない!!)。いつかあの泰山木に会える機会があればいいなと思う。でもそこに行けば会えるって知っているだけでも、とてもよいものだと思う。

サントリー美術館「京都・智積院の名宝」展

長谷川等伯と息子の久蔵が描いた金碧障壁画群。展示会サイトからコピペさせてもらいますが、「本展は、国宝「楓図」「桜図」など、誰もが知る障壁画群を初めて寺外で同時公開し、桃山時代の絢爛豪華な抒情美にふれる貴重な機会となります。」というもので、ほんとうに貴重な機会でした。
京都の冬の秘宝祭りというキャンペーンで現地で見たことがありますが、普段は公開されていない襖絵なんですのよ。あの寒いよく晴れた日にスタンプラリーよろしくすべて見てまわった日のことが思い出されます。これが東京で、一度の展覧会で、展示替えもせずに、すべて見られるなんてなんて贅沢な機会なのでしょう。とてもよかったです。これを運んだ人たち、ものすごい安全運転だったんだろうな。おつかれさまでした!

音声ガイドは栗原英雄さん。やたら声がいい。

フランス映画「神々の山嶺」

神々の山嶺 豪華版BD [Blu-ray]

夢枕獏原作、谷口ジローによる漫画作品「神々の山嶺」がフランス謹製のアニメ映画として昨年公開されていたことを、Amazon PrimeVideoの画面で初めて知った。生前とした美しい作画の作品で、平成初期の日本をフランス人作画チームが切り取るとこんなに美しく叙情があるものなのかと感動した。東京五輪のロードレースを、ツール・ド・フランスの撮影隊が国際映像を撮影したのと同じような新しい視点。「焼肉食べ放題」という元気の良さだけが売りの雑なデザインの看板も、なにかとても深い意味のあるものに見えてしまう、あのときと同じ感覚を覚えた。でも実際、漫画はどうだったかしらと読み直した。

谷口ジロー「神々の山嶺」

谷口ジローコレクション 神々の山嶺 コミック 1-5巻セット

というわけで、漫画の方を読んで確かめてみた。母親が入院してるとき、病室で買って病室でダウンロードして読んだ作品で、当時のことを思い出しながら読み進めた。「きしよぅきしよぅ」のセリフ、映画でも言ってほしかったな。

カズオ・イシグロ「浮世の画家」

浮世の画家〔新版〕 ((ハヤカワepi文庫))

100ページくらい読み進めていった時点でのサブタイトルは「ザ・上級国民」。200ページほど読んだときには「ザ・老害上級国民」、しかし物語を読み終えたときは、これはまさに「浮世の画家」としかタイトルのつけようのない作品だったと思い知る。渡辺謙でドラマ化されていたのか、なんとか見る方法はないかしら。

その他メモ

・市ヶ谷無印良品 リニューアルオープン。売り場を密にして買い物がしやすくなった。カフェは店員さんが把握できるサイズに縮小したのかな。コーヒーがおいしくない。お値段倍にしていいのに・・・。

・ユザワヤ銀座コア店閉店 建物を取り壊すんでしょうか。閉店セール覗いてみたけど、安くなっているのは布や毛糸ものが中心でした。刺繍したい。

・銀座コメ兵オープン 春節に間に合ってよかったね! 場所は伊東屋の東京駅寄り。お店が狭くなって品数もすごく絞ってる。どういう流通経路でここに陳列される羽目になったのか、いつどこで誰がつけるねんっていう、ブシュロンの2000万するエメラルドの孔雀とかサファイアの南国の鳥とか、コレクターレベルの宝飾品が見られて眼福。またジュエリーは値札に貴金属の素材とグラム数が記載されており、わかってるぅーーーと思いました。「ジュエリーはどうせ買うなら重いやつ」、おばちゃんとの約束だ!!

ブシュロンのとんちきな猫のリングとかブシュロンの動物モチーフの愉快なデザインのリング、一度は手に入れてみたいのよね、特に猫のは長毛種だし。あらやだ公式サイトに在庫あるー、666万、買えるかーー、でもすてきーー!

 

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