厳寒やKITTEの中に博物館/今週の本と映画と美術館

■インターメディアテク開館10周年記念特別展示『極楽鳥』

東京駅前の日本郵政大型ビル「KITTE」の中の二階と三階に、足を踏み入れていいものかどうか毎回悩ましく感じていた施設がありましたが、あれって「日本郵便株式会社と東京大学総合研究博物館が協働で運営をおこなう公共貢献施設」なんですね。知りませんでした。あのビルができて10年にもなるのに。そこで行われていた『極楽鳥』展を見てきました、入場無料。

「ヴァン クリーフ」主催の宝飾芸術学校による特別展「極楽鳥」が開幕 さまざまなメゾンや作家によるジュエリー約100点と標本の対比は必見

「さまざまなメゾンや作家によるジュエリー約100点」が圧巻です。特に孔雀のブローチのシリーズは貴石をこんなにふんだんに使えるなんて、どこでどうやって集めてきたのか、きっと人道的な方法ばかりでもなかっただろうなとか、先の大戦が終わってすぐこんな超絶技巧の豪華な宝飾品を作る余裕があり、またその需要があったのだと思い知らされたり。昨年の国立科学博物館開催の「宝石展」へ足を運ばれた方でしたら満足されること請け合い、お時間がありましたらぜひ。

映画「日の名残り」

日の名残り (字幕版)

1993年、コロンビア・ピクチャーズ制作。
原作の冒頭に登場する「私のフォードに乗って旅にでも行ってきたまえ」というセリフが「ダイムラー」に変わっていた時点で「これは原作にすごくよくにてますけど、別物ですよー、ほんっとすごくよく似てるかもしれないけど別物ですから!」と制作陣が宣言してくれたので、そうか、別物だよね、これは別物なのだと安心して見ることができた。
イギリスのお屋敷の執事とメイド頭のうまくいかなかった恋の話に、紳士であり続けようとした屋敷の主人が過去に犯した過ちが原因で没落していくさまを重ね描いた作品になっていた。
原作に近い、近いんだけどちょっと違う。違うんだけど、目くじら立てるほどでもない。原作がどのくらい実写化されているのだろうと期待する向きには物足りないけれど、中年寄の不器用な恋物語を静かに見守るという作品だと思えば百点満点の映画でした(えぇつまり、物足りなかったのですけれども)。
ヤング・ヒュー・グラントがヤング貴族として登場しているのですが、とても眩しかったです。お屋敷の設え、インテリア、紳士淑女のお召し物など最高でした! 最後の手ぶれ補正のない時代のヘリからの撮影なども含めて。

これに関連して、ダウントン・アビーの料理本というものがこの世に存在することを知りました。制作陣のフォローが手厚い。

川上弘美「三度目の恋」

三度目の恋 (単行本)

まさかの異世界転生ものだった! 静かで長い長編恋愛小説。読み止めるタイミングを失ってしまい、一日で一気に読んでしまった。はー、どっぷり使った川上弘美の世界! 伊勢物語が下敷きになっていて、なので高丘親王が突然出てきたりする。澁澤龍彦の、近藤ようこの、「高丘親王」です。川上弘美の「好きなもの全部詰めちゃう!的物語」でもありました。とても満足。表紙のイラストも詩情があり素敵。

関連図書。

孤塁

孤塁 双葉郡消防士たちの3・11 (岩波現代文庫 社会 333)

吉田 千亜 著。一介の地方公務員たちにこれほどまでのことをさせなくてはいけなかったのか。ところどころ涙を流しながら読んだ。必読。

新大型時代劇 武蔵坊弁慶

中村吉右衛門主演 武蔵坊弁慶 完全版 DVDBOX1【NHKスクエア限定商品】

BS4K で毎朝一話ずつやってるので、毎晩寝る前に一話ずつ見ている。1986年(昭和61年)放送。ハレー彗星がきたり、チェルノブイリで原発事故が起きたあの年ですよ。武蔵坊弁慶は中村吉右衛門(人格者!)、源義経は川野太郎(好演!)、源頼朝を菅原文太(既に関東制圧してますよね?)、吉右衛門の妻玉虫は荻野目慶子、片岡常春を村田雄浩、片岡為春を布施博、台詞の多い伊勢三郎役をジョニー大倉(ものすごく丁重に売り出されている印象を受けました)、源義仲を佐藤浩市、巴御前を大地真央、架空の忍び役に加藤茶(たまに菅田将暉に見えなくもない)と岡安由美子・・・・。
火も馬も全部実写、ロケできるものは野外で、どうにも実現できそうもない鵯越なんかは顔のドアップで乗り切る、五条大橋のシーンで川野太郎は負傷し、負傷しながらもそれを悟られない角度で撮影を暫くの間続ける・・・などという昭和のダイナミック撮影。鵯越や須磨などの位置関係を当時最新鋭のCGと空撮で表現するシーンがありましたが(今ならシブサワ・コウの名前がクレジットされるところ)、これも当時なりに知恵を絞ったもので見応えありました、ヘリからの撮影はやっぱり手ぶれ補正がなかったのでわやわやしていたのですけれども。

名作ですね。昨年の鎌倉殿の復習と思って見始めたけれども、たとえ現代の時代考証や分析がより正確で詳しいとわかっていても、鎌倉時代から昭和までの長い時間で育まれた源義経の物語を描くとしたらこうするしかなかったのだという説得力があるのがとてもいい。

中村吉右衛門と大地真央がやりあうシーンがありますが、ザ歌舞伎vsザ宝塚という雰囲気なのも良い。佐藤浩市は鎌倉物のドラマで生き延びる役が与えられないのか、彼にも長生きする役を!!

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菓子鉢買った

理想のデザイン、理想の大きさの鉢を、ケイタマルヤマのポップアップショップで見つけた。

このくらいの手頃なサイズの少し深さのある鉢を半年くらい探していたのだが、煮物を入れるとちょうどよいのかなと「煮物 鉢 古伊万里」などと検索していたが思うようなものがまったくヒットしない。ひょんなことから、お茶の世界でこういう器を「菓子器」「菓子鉢」と呼ぶことを知り、それで検索すると、理想の器が表示されるようになった。ものをしらないとこうなるのです、自分が探しているものがなんなのかもわからなくなるのです。

さて、ケイタマルヤマのお店で見つけてから、二晩考えた後に買った。好みの藍の色でほんとうによい出会いだった。ラッキーだった、私!

 

古美術・骨董 入門: 伊万里から始める 基礎知識 (古美術希)

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