もうひとつの「ゆれる」-藤沢周平の「一茶」

一茶 (文春文庫 ふ 1-2)
藤沢周平の初期の作品、小林一茶の生涯を描いた「一茶」。
子供の頃、我が家には一茶歌留多というようなものがあり、それには好々爺一茶が、おどけたポーズで飛ぶ雀をよけるイラストが描いてあった。この小説にはそんな一茶は一切出てまいりません。映画「ゆれる」やリリー・フランキーの「東京タワー」を思い出したりしました。
現代の上水内郡信濃町・柏原で生まれ育った一茶は早くして生母を喪い、親が再婚した継母との折り合いが悪く、追い出されるようにして江戸へ立つ。しかしなかなか江戸の暮らしに馴染めず、定職に落ち着くことができない。二十歳を迎えるころ、俳諧の世界に見せられ、この世界でならやっていけるかも、と立身を夢見るが・・・・
華やかな世界で立身できたかに見えた東京での暮らし、しかし実のところは旦那衆の庇護がなくては生きていけない根無し草の暮らし、荒漠とした三十~四十代の一茶の暮らし、老いていくその瞬間瞬間を切り取った自嘲めいた句の数々、田舎に骨をうずめるにいたるまでの心の変遷、地元での兄弟との確執、遺産争い、泣くような寂しさの切々とした表現、荒淫ともいえる晩年の日々・・・・芯から寒々しさを感じつつも、激しく共感もし、読み進めずにはいられないという不思議な小説でした。
夜、商店街でポチさんと先生に会う。ポチさんのファーはふわふわやー。
ヒグマも更新。

2 COMMENTS

ナガ

>おどけたポーズで飛ぶ雀をよけるイラストが描いてあった
スガんチにある、すきすきジジイ一茶のほう読みたい!

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