今週の本と映画と「帰れない山」と夏のパオロ・コニェッティ祭り

本読んで映画見てゴールデンカムイを毎週正座して見ていたら、
2023年の半分が終わってしまった。
のんきな! あまりにものんきな!! 

「帰れない山」パオロ・コニェッティ

帰れない山 (新潮クレスト・ブックス)

街の少年ピエトロと山の少年ブルーノ。山がすべてを教えてくれた。北アルプス山麓を舞台に、本当の居場所を求めて彷徨う二人の男の葛藤と友情を描く。世界39言語に翻訳されている国際的ベストセラー。

とても美しい物語でした。新潮クレスト・ブックス、2018年10月発売。

物語のラストについてこう思った(以降ネタバレを含むので薄い色の文字で書きます)。
妻と子は離れ、破産し夢は破れ、なにもかも失ってしまった男。いくら孤独を愛する山男とはいえ、これでは死んでしまうしか物語は終わりようがないではないかと読み進めていく。そして案の定、最悪の結末を迎えることになる。尋常でない積雪に閉じ込められ死んだと思われているブルーノ、しかし彼の死体は見つかっていない。主人公は『春になったら見つかるだろう』と結ぶ。
「しかし、なにもかも失ったブルーノは実はこっそりと山の家を出て南の地域へ一人移住してしまったのです」、そんな可能性もあったのでは? それなら楽しいのに。

などと思ったものですが、その後、映画を見てそれは甘い考えだったと思い知らされるのです。

フォンターネ 山小屋の生活
フォンターネ 山小屋の生活 (新潮クレスト・ブックス)

こちらは「帰れない山」の前に作者が発表した作品。でも新潮クレスト・ブックスで発売されたのは、2022年2月。「帰れない山」の評判が良すぎて、前作も掘り起こしたというところでしょうかどうでしょうか。
「帰れない山」のネタがところどころに(というかほぼ全編に)散りばめられていて、この経験が「帰れない山」という素晴らしい作品に結実したのかとしみじみと読み耽る。

映画「帰れない山」
パンフレット 帰れない山 映画

少年時代は愛くるしい二人の子役、ティーンエイジャーとなったふたりはザイタリアン美少年といった感じでしたが、それから10年後の成人したふたりは山のクマさんみたいな姿になって登場。ひぃ。時間の経過よ! 主人公を演じたルカ・マリネッリアレッサンドロ・ボルギは正装するとこんなイケメンのお二人なのですが、役作りってすごい。

少年時代から中年時代まで描いた作品なので2時間30分の尺が必要となっている。雄大な山々を潔く切り取る4:3のスクリーンサイズが見事にはまっていました。

ここからはネタバレを含みますので薄い色の文字で書きます。
ブルーノの死に至るまでをどう描くのか見守っていたが、雪崩のシーンが割愛されていた。あそこ割愛しちゃうのか、そうかそうか。救助に向かった後、山小屋の中に人間は見つからず、ブルーノの行方はわからず、捜索も中断する。主人公は春になったら見つかるだろうと結ぶ。その後、青空にカラスが飛び交い、雪原にブルーノのスキー板が見つかる、そのカラスたちは雪原に舞い降り、肉塊と思しきものをついばむ。ぎーやーーそんな表現になるとは! そうか、ほんとうに死んじゃっていたのか。

「山を下りる。(中略)おまえも一緒に山を下りるべきだ」
(中略)
「おまえはずっと俺をここから引きずり下ろそうとしてきたんじゃないのか? 俺のことは心配するな。この山は俺に悪さをしたことは一度もない」

二人の最後のこのやりとりが鑑賞後もずしりと残り、帰宅後、原作のラスト10ページを読み返した。ここからはネタバレを含みますので薄い色の文字で書きます。

映画にはなかったが、「俺が経営者になるなんて土台無理な話だったんだよ」とブルーノがピエトロに語るシーンがある。そんなことないよ、人生をそんなふうに決めつけるべきじゃないと口にしたかったピエトロは、酔っ払っててそれがまた気持ちよくてうまく口にすることができない。そんな会話の最中、山小屋を轟音が包む。雪崩だった。昼間、ブルーノがつけたスキーの跡が雪崩の通り道となって滑り落ちていく音だった。二人は九死に一生を得る。恐ろしくなったピエトロは翌朝、ブルーノを残し山を降りる。
当初鬱々とした気持ちでいたが、降りるに連れスノーシューで軽快に飛び回れるのが楽しくなり、いろいろな足跡をつけて山を降りきる。
あれ・・・ピエトロのその足跡、雪崩を誘発したりしてませんよね・・・よね・・・?

イタリアの山岳地帯の、父と子と、兄と弟の、美しい物語です。ご興味ありましたらぜひ。映画はシネスイッチ銀座で7月6日まで。

中国語版。素敵。八山という漢字がすごく効いてる。
The Eight Mountains/ Le Otto Montagne (Chinese Edition)

ドイツ語版。これもいい。いいイラストだ。
Acht Berge: Roman

日本語版。映画ではこんなふうに山小屋の背後を木々で囲まれた立地じゃなかった。木々が生い茂っていたところであの積雪に耐えることができたのかはわかりかねますが。だいたい標高2500mの話ですからね、日本でいったら中央アルプス駒ケ岳の千畳敷ホテルと同じ高さですからね。そらぁ冬は厳しいですよ。
帰れない山 (新潮クレスト・ブックス)

 

イニシェリン島の指おじさんと恋愛ボーイ

日曜日の午後、甥っ子が遊びにきた。白ワイン飲みながらダラダラ映画見ながらずっとおしゃべりをした。

オール・ユー・ニード・イズ・キル
オール・ユー・ニード・イズ・キル(吹替版)

公開当時「日本原作、トム・クルーズ主演」という大々的なキャッチコピーで宣伝され、私も劇場で見て興奮して帰ってきてすぐさま原作漫画を買って読んだ。日本のラノベがトム様の手にかかるなんて、と光栄な気持ちで読みふけった。本作ではほどよい年齢となった見目麗しすぎない具合の良いトム・クルーズが楽しめます。ほどよいトム・クルーズ、すごくいい。

軍の報道官であるトム・クルーズを戦地においやるブリカム将軍は、イニシェリン島の精霊の指おじさんことブレンダン・グリーソン。あ、ミッション・インポッシブル2でも出ていましたね、失礼、大俳優さんでした。
トム・クルーズを鍛え上げるファウル曹長のビル・パクストン、この人亡くなっていたのか・・・。残念だ。

友人が「原作とラストが違うんだよねぇ」と教えてくれたので、夜にざっと漫画原作を読み返してみた。ほんとうだ。大違いだ。でもトム・クルーズにバッドエンドは似合わないので仕方ないね(ニカッ)(白い歯を輝かせながら)!

ダンケルク
ダンケルク(字幕版)

第二次世界大戦のイギリス軍の「ダンケルク大撤退」を描いた作品。陸軍兵士の撤退を描く陸の章、民間船の協力を描く海の章、トム・ハーディが乗る戦闘機の戦いを描く空の章の三部構成の作品。
軍に協力する民間船に乗り込んだ少年が、不幸な事故によって船内で死んでしまう。「あら、この青年、つい先だっても水の近くで死んでませんでしたっけ」と記憶を遡ったら、湖で死んでしまったイニシェリン島の恋愛ボーイを演じたバリー・コーガンでした。この人は、私が生きている限り、イギリス映画を見続ける限り、三作に一度は目にする俳優さんとなることでしょう、いやすでになっているのか。

イニシェリン島の精霊 (字幕版)

ザリガニの鳴くところ

ザリガニの鳴くところ

アメリカン・湿地帯ドラマ。吹替版で見た。
母が家を出て、兄弟姉妹も順々に家を出て、残った父にも捨てられた、湿地帯の古い家に暮らす貧しい少女が主人公。街に暮らす裕福な家庭のイケメンのチャラ男が主人公がちょっかいを出す。そのチャラ男の声が小林親弘さん。チャラ男でどうしようもないのに声がいい。声がいいんだけどクズすぎる。「杉元はアシリパさんにそんなことを絶対言わないのに!」と憤慨しながら最後まで見る。小林親弘さんは漫画の主人公・杉元佐一ではないということをまずしっかりと認識し直すところから始めないといけませんね、えぇ。

アメリカン・湿地帯ドラマというジャンルにはこんな作品がございます。みなさまもぜひ。

MUD マッド(字幕版)

ハッシュパピー バスタブ島の少女 [DVD]

 

その他刺繍図案を探すのに明け暮れておりました。アメリカのサイトでいい図案を見つけ(ロシアの団体が作ってるものだった)、糸を付けた状態で買わなくてはならないみたいで、キット分の料金を払うが、糸はいらないので図案だけ送ってくれまいかと相談しているところ。

以上、2023年の後半戦もがんばっていきましょうー。

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