冷房の切れし真夏の能舞台


宝生堂で奥川恒治さんの「松風」を見てきました。
W嬢に誘っていただき、K谷さんと一緒に。
http://nohnohana.com/
朝はひどい雨だったので、K谷さんも私も「着物で来たかったですよねぇ」と残念がっていたのですが、にゃんと、宝生堂館内の冷房が不調で、なまぬるーい空気が! じっと座っているだけで額に汗が浮いてくる状態で、何人か着物の女性がいたけれど、洋服できて今日はよかったのかもしれない・・・とほっとしました。が、なんといっても、一番つらいのはステージの上で演じている能楽師さんたちですよね。装束とお面をつけて、1時間半もの長い舞台を、あの暑い中で! 
松風と村雨は須磨で暮らす姉妹。天皇に向かってやんちゃしたばかり「もーおまえ!須磨でちょっと頭冷やしてこい!と流されてきた在原行平は須磨の海岸で自分さがしをしているところ、汐汲みをしている姉妹を見つけます。海育ちの若い娘っこたちの体ははちきれんばかりで、「やべ! 海の女、超新鮮!」とばかりに行平は二人を気に入ります。「よっしゃよっしゃふたりとも面倒みてやるわい」と、行平は二人の姉妹に「松風」「村雨」という今風のシャレオツな名前をつけ、三人で仲良く暮らしました。三人で! 仲良く! ワイルドだねぇ! 
彼らの楽しい毎日が続いていたある日、天皇から「言い過ぎた、ごめんちゃい! 戻ってきていいよ」と連絡がきます。須磨での暮らしも悪くはなかったのですが、そこはほれ、都会育ちの行平のこと、京都へ戻る決心をします、割りとさくっと。「わりっ、おれ、そろそろ京都帰るわ。おまえたちもいいオトコ見つけて達者に暮らせよな」と言ったかどうだかわかりませんが、出立の日、行平は松の木に自分の烏帽子と狩衣をかけます。「立ち別れ いなばの山の 峰に生ふる 待つとし聞かば いま帰り来む」と歌い、「やべっ、俺、超うまい歌読めたww」と思ったかどうだかわかりませんが、姉妹を残して帰ってしまいます。
まるで玉手箱の蓋をあけてしまった浦島太郎のように、須磨に残された松風と村雨。村雨ちゃんは「もーおねーちゃん、あの人帰ってこないから!目、覚ましてよ!」と懇願するのですが、松風ちゃんはなかなか思い切ることができません。残された狩衣を見ると楽しいあの日々が蘇ってきてしまいます。「あたい、烏帽子と狩衣つけて、ちょっと舞ってもいい?」「おねーちゃーん! しっかり!!!」「だってだって、あたい、踊ってないと、なんかおかしくなっちゃいそうで」「おねーちゃーん、もうすでに充分おかしいって!!!」
というお話です。はらり。。。
松風と村雨の面は今回の舞台のために新しく作られたというもので、それはそれは美しく、若い女性ならではのみずみずしさと透明感があり、素人目に見ても「美人さんだ!!」とひと目でわかるものでした。能面師さんはまだ29歳の方だそうです。先が楽しみですね。
狂言は野村萬斎さんで「附子」。仕舞いは観世喜正さんと喜之先生。
んもう!お得な舞台でございました。
その舞台の前にK谷さんにお伝えしたんですけれども、「姫のためなら死ねる」という清少納言4コママンガが面白いです。第一話からぜひ。
土曜日に、紀伊国屋で注文したゴルゴ13が1巻~40巻まで届きました。コンビニで小さいゴルゴ13が売られてますけれども、あれに収録されている話って、だいたいこの時代のものだということが判明しました。えぇー! さいとう・たかをプロダクションは、ゴルゴで何回稼ぐつもりなんざんしょ!? 1巻から10巻までざざっと読んでみたけれど、読んだことのない話にあたりませんでしたよ、ヨヨヨヨ。ゴルゴ13は、狙撃手編「兼高かおる世界の旅」だと思うのですよね、うむ。当時の取材秘話とか聞いてみたいなー。

2 COMMENTS

K谷

昨日はお誘いいただき、ありがとうございました。あとからお話しをうかがって、
役者魂と言いましょうか、壮絶なものを感じました。
また歌舞伎との比較で恐縮なのですが、謡曲をもとに長唄が作られ、それに
振りを付けた、「村松風二人汐汲」という舞踊劇があります。
ソロで踊る場面の鳴り物は、
姉用BGM = 能のお囃子。
妹用BGM = 三味線(初演当時はナウでイケてる楽器だったはず)
…で、万事控えめなのに燃え上がり方が半端ない姉と、奔放だけど
どっか冷めてる妹、それぞれの性格を説明してくれてる!と、
初めて観た時にちょっと感動したものです。
でも、昨日の村雨ちゃんは、終始冷静?

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スガ

美人姉妹を手玉にとって、おのれ~、行平、女の敵ぃぃぃぃ、と思いつつも、それが700年とか800年の時を経て残っているんですから、やっぱり古典って素晴らしいなと思います。
「一年かけて準備してるのに」と悔しそうに話されていた奥川先生が男前すぎて眩しかったです。梵天丸もかくありたい。
三味線の村雨ちゃん、ちょっと見てみたいです。古典のちからって!

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