川上弘美「センセイの鞄」/モテたい話

お山にも出かけず、のんびりしてますよ。
1974年、フジテレビで放映されたズイヨー映像制作の世界名作劇場「アルプスの少女ハイジ」は、前半年分を見終わっております。今、アルプスの少女ハイジ 35周年メモリアルボックスが出ててるんじゃが、これ買ってもよかったかなー、とか。
テレビではほとんど見ていなかった「アルプスの少女ハイジ」ですが、大人になって見ると、いろいろと発見があります。これはまた全部見終わってから後ほど。ひとついえることは、
ロッテンマイヤーさんって今見ると、そんなにおばさんってほどおばさんじゃない。仕事のできる、だけどちょっと頭の固いアラフォーの女執事ってところ。でも、まぁ35年前は、アラフォーって年齢は充分おばさんだったんだよなー、とも。まぁそれはさておきまして。
川上弘美「センセイの鞄」。
主人公は、アラフォーもアラフォー、38歳のOLの大町ツキコさん。同じ居酒屋でよく居合わせる三十歳も年の離れた高校時代の教師と、ゆっくりと時間をかけ、恋に落ち、その恋を遂げる、というものがたり。谷口ジローさんがまだ描いていないここらへんのエピソードは、どういう絵面になるんだろう、と思いながらゆっくりと読み進める。
あぁ、こんな居酒屋のある街で暮らしたいものじゃ、と、何度も思う。物語の舞台はどこらへんかしら? 物語にあるヒントをつなぎあわせて、その街を特定しようと試みる。
上野の美術館まで、電車を二本乗り継いでいく。
栃木までキノコ狩に行くのに車で2時間。
桜の咲く土手を、小島君と手をつないで何度か往復する。
バスが頻繁に通っている住宅街。
ちょうどよい密な具合な住宅街が舞台になっているけれど、川崎市とか横浜市といった感じはしない。千葉・埼玉方面にある街かしら、いやいや、どうもなんとなく都内のような感じがする、だとしたら中央線方面?・・・と、ここまで書き連ねて気がついたけど、これらは東京のどこにでもある街の風景なのかもしれない、桜の咲く川さえあれば。
解説は斉藤美奈子さん。
 ある本がベストセラーになる理由は、ざっくり捉えると意外に単純だったりする。本書にかんしていえば<究極の癒し本は「寂しいお父さん」に効く物語だった>(拙著『趣味は読書。』)という法則が当てはまるだろう。
 そう、数々の書評が実証し、<虫
(スガ注:週刊朝日に寄せられた書評の書き手のペンネーム)>が図らずも指摘したように、『センセイの鞄』は多くの中高年男性を「舞い上がらせた」のである。
 どこが「舞い上がらせた」のか、わざわざいうのも野暮ってものだろう。
 七十歳がらみの男性が、三十歳以上も年下の女性と恋に落ちる。

(以下、物語の核心に触れるので割愛)
 これほど幸せな老年期があるだろうか。
(中略)
 六十代以上の男性が恋愛の対象として描かれるなど、それまでの小説では滅多になかった。あっても「スケベジジイ」の役柄だった。
 センセイは枯れた老人だ。インテリだけど不器用だ。少し変人かもしれない。それでも年下の女性とのこんな関係が「あり」だとしたら……。「オレだってもしかしたら」と人生の下り坂にある男たちが夢想しても誰も責められまい。

人生の下り坂に差し掛かった男の側から見た「センセイの鞄」はそういう物語だったかもしれない。渡辺淳一の失楽園はなんだか激しかったし、金もかけなきゃいけなかったけど、これならまぁいけるかな、と気分になるのもわからないでもないです。
ですが、「もしかしたらオレも・・・」と思った年配の男性たちにちょっとちょっととご注意したいのは、七十歳近くになって、あれだけカクシャクと生きていくのは並大抵の体力じゃ間に合わないと思いますわよ。
センセイは太ってもおらず、痩せてもいないけど、姿勢はよく、おなかは出てなく、キノコ狩に行ってもさくさくと急な坂道を歩き(キノコ狩に行くような山は、高尾山や陣場山みたいなほがらかで健康な遊歩道が整備されてるわけじゃなく、短い鎌がちょうどいい杖になるような角度を持つ急な坂道なのよ)、それと同じだけの体力を持つには今日からすぐ鍛錬しないと老後に間に合わないと思いますわ。
・・・などという話を新橋の居酒屋で話してたら、「年上の中年男が若い子たちにやたらモテるとかいう記事だか新書があるらしいんだけど、四十とか五十の男達がね、二十代の娘っこにモテるっていうヤツで」という話になった。あ、なんか、それ、私もTwitter かなにかで見かけた気がするよ、なんだっけなー。「そりゃー若い男の子じゃ物足りないよね、デートのときはチェーン店、イベントの企画も立てられないし、その他なんたらかんたらなんたらかんたら」と話は続いたんだけど、「うーん、そうかなー。どっちかっていうと、『その年齢になっても、まだイケてます!』と社会が人々に安心させるために、定期的に繰り出してるネタだと思うよ」と私が話を無理やりまとめた。
いや、しかし、「モテ」に対するモチベーションはすごい。Amazonで「モテ」で検索すると、えらくたくさんの本が出てくる。上の話題で出た新書を探そうとして「中年男性 モテ 五十代」でググったら、『50代男性ファッション代行』サービスの会社の広告がヒットした。うむうむ、人は見た目が大事よね、うむー、この項、続きます。

人は見た目が9割 竹内一郎 社長、その服装では説得力ゼロです 中村のん

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