イギリスは変な作家のいる国だ/イアン・マキューアン「アムステルダム」

アムステルダム 新潮クレストブックス

ひとりの魅惑的な女性が死んだ。選ばれた男たちとの遍歴を重ねた途上で。元恋人の三人が葬儀に参列する。イギリスを代表する作曲家、辣腕の新聞編集長、強面の外務大臣。そして、生前の彼女が交際の最中に戯れに撮った一枚の写真が露見する。写真はやがて火種となり、彼らを奇妙な三角関係に追い込んでゆく。才能と出世と女に恵まれた者は、やがて身を滅ぼす、のか。98年度ブッカー賞受賞作品。

社会的に成功している壮年の男三人が、若い頃に翻弄された女の子に、彼女の死後も激しく翻弄されるというお話。作品名の「アムステルダム」というのはこの話のオチそのものなんだけど、そうか、一国の首都の名前がオチに使われるというのがなんだか大変にへんてこなお話でございました。「もうオナニーする元気もない」という世代向けの面白い小説でしたわ。新潮クレスト・ブックスで。

 

こういう話は若い頃に読んでも多分そんなに面白くないのかもしれませんね。この年令になると、登場人物たちに適当な俳優をあてがって(作曲家はユエン・ブレムナー、新聞編集長はジェームス・マカヴォイ、外務大臣は背を小さくしたジュード・ロウなどと)物語を楽しめるし、「あぁ湖水地方のその雰囲気わかる、ウサギちゃん大戦争(ピーターラビットともいう)の映画でみたわ」とかいろいろな視覚の記憶の蓄積が物語世界を色濃くつくりあげてくれるんですものー。まぁそれにしてもあぁ都市の名前をそういうかたちでオチに使うってねえ・・・

 

ピーターラビット™ (吹替版)

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