橘に鶯老いぬ初瀬の里 正岡子規/中村淳彦「ルポ 中年童貞」

ルポ 中年童貞 (幻冬舎新書)

中村淳彦さん原作の「ルポ 中年童貞」をもとにした「漫画ルポ 中年童貞」というネット漫画がリイド社のサイトから読めます。第一話はいつでも読めるので、お時間がありましたらぜひ。桜壱バーゲンさんの骨太な絵がどっしりとした読後感をもたらしてくれます。

第一話はこんな話。座学だけで習得できるヘルパーの資格をもった就業経験の少ない中年童貞が介護の現場で働き、ろくな作業もできず、漢字もまともに書けず、まわりの気持ちを思いやることも出来ず、生まれた家でいまも母親にあらゆる面倒をみてもらい、彼が巻き起こすトラブルに疲れ果てた人々が離職していき、退職勧告は受け入れず、高い広告費を使って新しくやってきたアルバイトの人たちをいじめ抜きまたもや離職させ、忘年会では「実は僕、童貞なんだ」と女性職員たちを前に告白し、「24歳のときに知り合った女の子がいまでも好きなんだー! 風俗行ってる汚い男なんかより全然きれいでしょ!」と叫び、場を凍りつかせる。

え・・・えっと、これ、実話・・・なんですよね・・・・と、その衝撃でしばらく固まってしまいました。

いやいやいや、たまにネットを見ていると「処女以外は女じゃない」などとどこの文明圏の価値観なんでしょうかという発言を目にしたり、アイドルのお泊りデートのニュースに大変な罵詈雑言をぶつける人々をみかけますが、ネタでやってるのかなとずっと思ってました。が、どうもそうじゃなかった。読めば読むほど暗澹な気持ちになってくるこの「ルポ 中年童貞」、読み終わったあと、なにかさわやかな新書でお口直しをしなければ、というご本でした。

国立社会保障人口問題研究所「第14回出生動向基本調査(2010年)」によると、20~24歳の未婚男性で性交経験がない人は、40.5%と前回(2005年)に比べ6.9ポイント上昇。さらには、30~34歳の未婚男性のうち、性交経験がない人の割合は26.1%となっている。およそ、4人に1人が同定という計算だ。
この数値を元に計算すると、30歳以上の未婚男性はおおよそ800万人、全国に209万人の中年童貞がいることになる。これは長野県の総人口と、ほぼ同数だ。

長野県のっ、総人口とっ、ほぼっ、同数!!!! 4人に1人? で、この本を読んでいくと、上の介護現場で働く男性のような極端な人ばかりではなく、「裕福な家庭に生まれそこそこの商売をやっているフツメン」やら「上場企業につとめる年収しっかりのこざっぱりしたフツメン」なんかも中年童貞だったりします。童貞であることを悩んでいる本人たちは大真面目なんだろうけど、ご飯食べたあと勇気を奮い起こして「ラブホ行こうよ」と言えた人と言えなかった人の差というかなんというか、まーそれだけだと思うんだけど、というかまず好きな女の子をご飯に誘えないのか。いやいやいや、それにしてもなかなかに大変な事態! そりゃー結婚する人も減るわ、出生率も下がるわ、これってかなり根深い社会問題なのでは、というのを追った新書でございました。後半の田房永子さんとの対談は圧巻でしたよ! ゾッとしました。なにが書いてあるかは読んでみてのお楽しみ☆ 

AV監督の二村ヒトシさんの「団塊世代に父親になる力がなかったこと」って分析も鋭かった。

読んでて初めて知ったけど、婚活パーティーっつーのもなかなか大変なんだねぇ。みんな無駄な時間がないから、「モテる要素がなにひとつない人」という人は圧倒的に排除されていくんですって! いやぁん怖い! 「自分が客観視できない人」の振る舞いも淘汰されていくんですって! 結局、もともと婚活しなくてもよいようなハイスペック人材同士がマッチングして終わり、彼らはスキップして会場を後にできるけど、残る屍はいつも同じ面々。しんどい・・・私だったらそんなの立ち向かえれない・・・。どうして婚活も就活並の厳しいものになっているの・・・見合いがある時代はよかったよねぇ。昭和25年の男性の非婚率は1.5%だったそうですが、2006年の35~39歳お未婚率は30.9%、2010年の40~44歳の未婚率は27.9%。きつい数字だ。さっきテレビで釣りバカ日誌やってたけど、あんなハマちゃんみたいな人を雇う余裕はどこの会社にも無くなっちゃって、収入も減って社会はギスギスする一方、よくはないよね、それでたまにまとめサイト等でびっくりするような社会性のない発言する人に出会っちゃって、半日くらいモヤモヤとするわけですよ、よくはないですよ。彼らの社会性の無さの筋金の入り方に、さすがの私もこの新書で理解できてしまいました。

こういった人たちが増えていく社会で、なにか私が役立てることってあるのかしら。いまいえることは、家庭科の授業も手を抜かず生活というものをきっちりと捉え、成人したら実家を出て、自立した暮らしに人生の早い段階でとりかかれってことくらいでしょうか。自立大事! ていうか、親が追い出さんといかんのよね。そしてある程度のインテリジェンスを身につけさせる。頭が悪いとどうしようもない。


パナマ文書のお話、誰かがきっと良記事を書いてくれて、其の良記事をotsuneさんがTumblrにまわしてくれるに違いないと思っていたらドンブラコッコとまわってきた。すごくよくわかりました!
【ここは3.11後の日本】ふるさと納税のことを考えるとパナマ文書について認めざるを得ない俺がいる

橘玲さんが「タックスヘイブンよくない!」的なことをつぶやいてて、えぇーおっちゃんがタックスヘイブンのこと教えてくれたんやないですのーんと突っ込んだものです。

2 COMMENTS

いち

昭和40年代と平成20年代で、
いわゆる結婚年齢25~35歳の
恋愛結婚しているパーセンテージって
ほぼ変わってないのですよ。
激減(というか激滅?)したのは
見合い結婚なのです。

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ukasuga

昭和40年代でもそうだったんですねー。お見合いババアは面倒な存在だったかもしれないけど、地域社会をつなぎとめる大事な役割だったんだよね。「自分の人生にマッチした人を見極め、交際し、結婚までこぎつける」ってもしかしたらハードルが高いことなのでは、と。運命の人と一緒でなくても、円満な家庭を築けるってのが、大人の嗜みってもんかもしれませんし。「(理想的な)運命の人」じゃなくてそこそこ折り合いがつく人でいいのにね。

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