あまりある冒険譚や夏燕/峠恵子「冒険歌手 珍・世界最悪の旅」

冒険歌手 珍・世界最悪の旅

両親の愛情に恵まれすくすくと成長し、大学時代にライブハウスで歌っていたところをうっかりスカウトされ、うっかりプロのシンガーになって、人生は順風満帆! 無邪気にこの真っ直ぐな人生を信じているけれど、はたと気がつく、「私の人生には苦労が足りない!このままでは苦労知らずな大人になってしまう!」と心焦る日々、うっかり書店に入り、普段読むこともあまりない山と渓谷社の雑誌をぱらりとめくり、うっかり目に飛び込んできたのが「ニューギニア探検隊隊員募集中!」の広告。油壷をヨットで出て太平洋を渡りニューギニアに入り、5000m弱の未踏の北壁を制覇してまたヨットで帰ってこよう、という探検! 「これだわ、私の人生に足りないものはこれだったんだわ!」、そして彼女はハイハイハイハイハイーと勢い良く挙手し、この探検にくわわります。ときは2001年、探検の途中でニューヨークの同時多発テロのニュースを、ペニスケースと腰ミノつけた現地民族に囲まれた中で知るのでした・・あぁ彼女の人生やいかに!!!

いやー私の人生も常々冒険が足りないと思っているんですが、この人の冒険ときたら「若い身空のお嬢さんがこんな過酷な旅をしなくっても・・・・」と肩をポムポムと叩いてあげたくなるレベル。飛行機だったら4時間で行くグアムに、ヤマハのヨットで13日間かけていくんですもの、そこからさらに南下してニューギニアを目指すのですが、そこでヨット使う意味があったのかちらどうかちら。ニューギニアに着いたら着いたでガイドに騙され原住民に騙されテロリストには狙われ、未婚のお嬢さんが無理して背負わなくてもよいレベルの冒険が満載! このときの経緯がWikipediaにさくっと数行で紹介されているのでまるっと引用。

2001年(平成13年)- ニューギニア探検隊の一員として全長12m弱のヨットで三浦半島から出航。45日間かけてニューギニア島のインドネシア領イリアンジャヤ州に到達。オセアニアで2番目に高いトリコーラ山(4750m)北壁の最高部600mを世界で初めて登攀し登頂する。また旧日本兵の遺骨捜索や、フクロオオカミ捜索などで約1年間のジャングル生活を送る。
2002年(平成14年)- 4月、再びヨットにて帰国。

この最悪な冒険に参加したのが当時早稲田大学の学生だった冒険家の角幡唯介。
空白の五マイル チベット、世界最大のツアンポー峡谷に挑む (集英社文庫)

この冒険の首謀者兼隊長は日本にウィンドサーフィンを広めたと云われる藤原一孝、いまではニューギニアでインターネットカフェ併設のホテルを経営してるそうな。その藤原隊長の存在をうっかりと知ることができるのがこちらのご本。
越境フットボーラー

ねーねー冒険者の世界って狭いの? 
もしかして地球って思ってるよりも狭いの小さいの?!

ユースケ君も峠さんも「探検番組を見て冒険家になろうとした」といってので川口浩探検隊が残した爪あとの深さを知るというかなんというか。ああいう番組って、いまの子どもたちだと『鉄腕ダッシュ』とかになるのかな? ちっちぇーのぅー、ちっちゃいけど堅実で現実的でよいのかもしれないけれど。藤原さんは「世界のこんなところに日本人」という番組でも紹介されたそうですが、あの番組もある意味「川口浩探検隊」枠になるのかな?

二十代のときに読む本ってさー、「二十代から準備したい老後破産を防ぐ資産づくり」とか「フランス人はちょっとしか服もってないってことになってまっせ」とか「キャリアを積んでFXもやって株もやって札束風呂に入ろうぜ!」といったご本じゃなくって、アホでデタラメで出たとこ勝負で、そのくせ命がけのこんな旅の本なんじゃないかしらとしみじみ思ったわ。

水曜スペシャル「川口浩 探検シリーズ」 川口浩探検隊~野性の脅威・猛獣編~ DVD BOX

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