おいでやすここは退屈迎えに来て/花房観音「女の庭」

女の庭 (幻冬舎文庫)

恩師の葬式で再会した五人の女。近況を報告しあううちに、教室で思いがけず見たビデオの記憶が蘇——。先生と濃厚なセックスをしていた、あの女は誰だったのか。互いに互いを疑いながら、女たちは今日も淫らな秘め事を繰り返す。不倫、密会、出会い系……。秘密を抱える腹黒い女たちと、それを監視する窮屈な箱庭、京都。重ねた噓が崩壊する時、女たちの本性が放たれる。

大学時代は小動物系で可愛がられていたけどいまは家庭を手に入れ落ち着き体型までも落ち着いてしまった専業主婦、「したいからしてるだけ」と何人もの男と関係を持つ出戻りバツイチ女、京美人と蝶と花よと持て囃されその旬を逃したあとなにも残らなかった35歳派遣、地方から京都に進学でやってきて夫婦でカフェ経営をしている好奇心旺盛すぎる子供の産めない主婦、同じく地方上京組でサロン経営することでその地に根を下ろしたセックス嫌い。

そんな五人の女の秘め事の短編集。就職氷河期を生き抜いてきた基本的にはタフな世代のお嬢さん方の物語。花房観音さんは、男の人が読んで喜ぶ女の人が書く官能小説ではなく、女の人が喜ぶための大根おろしですりおろしたくなるくらい現実的な話を書くから好き。でもこの本もKindle積ん読コーナーに随分長い間置いておかれてましたが、昨夜ようやっと読みました。

専業主婦の彼女は思う。
夏に、同級生達に再会し、彼女たちを羨んでみたけど、じゃあ自分が彼女達の境遇になりたいかといえば、そうじゃない。結婚せずにひとりで生きていくのは寂しいし、ましてや自活や、自分で商売なんて、できない。会社勤めも無理だ。両親と、夫に助けられて生きていくしかできない。だから、ここから、動けない。私を取り囲む城壁の外には、出られない。

別に自分で自分の暮らしを立てることがそんなに立派なことだとは思わないけど、こういう人もいるんだよなー。こういう人は京都の箱庭の中で安心して暮らしていくのがいいんじゃないかな。彼女が大嫌いな狭い箱庭の京都、でもその京都ブランドの恩恵に一番預かってるのがこういう人なんだろうな。だからサードガールのあの京大生もだなー、ふんがー!!!

これを読みながら山内マリコの「ここは退屈迎えに来て」をちらちらと思い出していた。

そばにいても離れていても、私の心はいつも君を呼んでいる——。都会からUターンした30歳、結婚相談所に駆け込む親友同士、売れ残りの男子としぶしぶ寝る23歳、処女喪失に奔走する女子高生……ありふれた地方都市で、どこまでも続く日常を生きる8人の女の子。居場所を求める繊細な心模様を、クールな筆致で鮮やかに描いた心潤う連作小説。

車がないので、つまんない男の子に迎えにこさせてつまんないエッチして夜明けの国道をとぼとぼと歩いてる女の子の話を思いだした。この話はとても爽快。あまちゃんの最終回の『2人一緒にジャーンプ!』と同じくらい爽快。あわせて是非。

ここは退屈迎えに来て (幻冬舎文庫)

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