金色の銀杏並木と怖い絵と/上野の森美術館「怖い絵」展/DJミュージアムの時代

怖い絵 泣く女篇 (角川文庫)

10年前に出版された中野京子さんの「怖い絵」、それに収録されている絵画を集めた「怖い絵展」。世界各国からあらゆる作家のあらゆる「怖い」作品を集めてきたその収集力にまず感動。

上野の森美術館といえば、ポール・スミス展や蒼樹うめ展、大河原邦男展などをやったりするちょっとポップな切り口をもつフジサンケイグループの美術館で、今回の「怖い絵展」は異例のヒット展覧会となっているようです。

入場列に1時間並び、館内も大変な混雑、リュックを背負っている人には「リュックは前にお願いいたします」と黒スーツの誘導員の方が穏やかに声をかけてまわる。少し背の高い男性誘導員は人気作品の前で優しいよく通る声で誘導を続ける。
「作品の前に立ち止まられますと、後ろの方はあなたの後頭部をずっと鑑賞することになります。ゆっくりで構いませんので、あるきながらご鑑賞ください。ひとりでも多くの方に作品を楽しんでいただけるようご協力お願いいたします」
あぁなんて美声、お経のようなやさしい気持ちのよい優しい言い方! はっ・・・彼はもしや、前職はDJポリス・・・!? と、まぁ、最近はこういう展示会の中で、スムースに観覧できるよう誘導してくださる人員が配備されていますが、まー警備員さんなんかよりはよっぽど賢いやり方よね。「兵糧米でも入ってるんかい!」って突っ込みたくなるでっかいリュック背負ったおじさんも素直に言うこと聞いて、前にリュック担いでいたりしてくれるものね。よきことですたい。

 

本展覧会のポスターにも使われている「レディ・ジェーン・グレイの処刑」。展覧会のクライマックスにあたる位置に飾られていますが、これはすごい作品。政争に巻き込まれた16歳のなにも知らぬ少女が王女として祭り上げられ、9日間在位したのち、処刑されてしまう場面を描いたもの。

自らの潔白を訴えるかのような白いドレスがまばゆく、目を背けたくなるような痛ましさ。かなり大きな作品で、薄暗い部屋の奥の壁にこの作品が飾られている場面に出くわしたら、一瞬それが現実のことかと思ってしまうことでしょう。これは自分の目できちんと見ることができてよかった作品のひとつとして記憶に残りそうです。

作者フランスの画家、ポール・ドラローシュ。「なお、視覚効果を考慮して処刑が室内で行われたように描かれているが、実際は屋外で行われた」とのことですが、レディ・ジェーン・グレイは、ライオンズゲートから入城し、罪人が通るべき水門から城を追われたんですって。ライオンズゲートってそういう意味だったのかっ! カナダの映画製作会社はそこから名前とったのかな。

 

あとですね、夢魔。ヘンリー・フューズリの『夢魔』。眠っている女性の心臓の上あたりで、らんらんと目を光らせながら背中を丸めているけだものを描いた作品。まぁ! なんて恐ろしい姿の悪魔! だけど、猫ってだいたい毎晩こうだよね。

ドイツ系スイス人画家のフュースリーさんは、もしかして毎晩寝ている間、布団の上にやってきてゴロゴロ喉を鳴らしながら眠る猫ちゃんにうなされていたのでは? というか、ただの萌え絵? もう、フュースリーさんったら繊細なんだから!!!

 

想像していたよりも遥かに見応えありました。みなさまもぜひ。12月17日まで。急げ急げ! 入場前行列は覚悟していってね!

※掲載画像はパブリックドメインです。

怖い絵 (角川文庫)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください