林望先生の「イギリスはおいしい」-ロンドン日記 その9


名古屋の朝食より凶暴な量のイギリスメシ。薄くてかたいトースト4枚、目玉焼き、マッシュルーム(これはうまい)、切れ味のないナイフとフォークで挑むことになったかたくてかたくてかたい巨大ベーコン2切れ、でかくて太いソーセージ2本(これはうまかった)、トマトの煮込み、豆の煮込み。このメニューを頼んでいる人が多かったので、私も挑戦してみたのだけど、トマトと豆を残してる人が結構多くいて、どういうことなのかしら、と思ってみたら、そういうことでした。煮豆は「おいしいっ!!」ってわけじゃないけど、月に一度くらいなら食べてもよいかなーという御味。
今回の旅で受けた情報量が多すぎて、帰国後一週間も経過しつつあるのにまだまだ全然消化しきれてないのですが、今日はこの煮豆の話。
実は林望先生の存在や出版された本のタイトルはいろいろ知っているものの、その本を一冊通して読んだことがなく、記憶が濃いうちに一冊読んでみましょうか、と「イギリスはおいしい」という食に関する本を買ってみた。1995年初版、文春文庫。今、読んでいるのだけど、冒頭からこの煮豆の話がでてきてウヒヒとなる。この赤い煮豆は「ベイクドビーンズ」という料理で、焼いてるわけでもないのに「ベイクド」ビーンズといいます。
まずこのベークドビーンズというものは、要するに大豆を煮たものであるが、多くの場合トマトケチャップで薄く味付されていて、したがって色はトマトスープのごとくである。ちなみに例の『ビートン夫人の家政書』にはかかる料理は出ていないから、ヴィクトリア時代の少なくとも中流以上の家庭料理の中にはこんなものはなかったのかもしれない。ではどうして、かかるいかがわしいものをイギリス人が好むかといえば、その理由はかんたんである。このベークドビーンズなるものは、缶詰で売られているからである。
ズコーっ。ただ単に彼の地の人は食に興味がないのかー。「ビートン夫人の家政書」という本は、中流以上の家政はこうあるべし、という主婦の指南書で、いろいろな料理法も載ってるそうなのですが、これもちょっとご紹介。
ヴィクトリア時代の有名な料理のバイブルである『ビートン夫人の家政書』はイギリスの料理を考える上で、必見の名著であるが、そこにもほとんどすべての野菜について「茹でる(boil)』という項目がある。それによると、たとえば、ほうれんそうは、軸を取り、十五~二十五分茹でて、裏ごししてピューレーにするという方法しか書かれてない。リークは、酢と塩を入れた湯で、ぶつ切りにして四十分茹で、その後よく水に晒して、トーストに載せてたべる、とある。あるいはまた胡瓜は皮を剥いて十分茹で、パセリソースであえて食べよ、と教えているのである。
ごめん、どれもこれもとってもまずそう☆ 
ビートン夫人によると「野菜はキホン、茹でる。若いものは二十分を目安に、そうでないものは四十分茹でるべし!」としてるそうですが、そんな料理方法だったから石炭の需要があがり、結果、ばい煙だらけの空になったのではないでしょうかっ! さっと茹でるとか、しゃきっとした歯ごたえを楽しむ、とかそういう文化はなかったのかー。なかったのよねぇ。
このカフェは、かわいい巻き舌・ふっさり睫毛のメガネっ娘(でも目が眩むようなナイスバディ)とアジアのちっちゃい女の子とイギリス人でーすという風体の男の子の三人で朝は切り盛りしてたんだけど、巻き舌メガネっ娘がとてもやさしくて、彼女がチョコクリームをかけてくれたベルギーワッフルはたいそうおいしく、これだけ食べに2日通ったりもした。メイドカフェへ日参する男性たちの気持ちがわからないでもなかった。上の写真のような凶暴な量の朝ごはんもあるけど、作りは基本的にカフェ風なので他のパンやクロワッサンやフルーツサラダはおいしく、今回の私のこのオーダーは、外国の方が東京に遊びに来て、吉野家でおそるおそる納豆定食に挑戦してみたようなものだったのかもしれません。あのメガネっ娘、今日も元気にチョコかけてるのかしらー。

5 COMMENTS

カサ

昔ながらのイングリッシュブレックファストだね~ 
一度食べてもいいと思うけど2度はなくていい気がします。
ここ数年はいわゆるほんとに美味しいおしゃれなカフェも増えてると聞きますが~
確認しにゆきたい!!

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スガ

カフェ増えたらしいですねー。オーガニック野菜のチェーン店もとても増えていたようでした。オシャレカフェ多かったよ!その点はすごしやすかったよ! 
カフェ文化の侵略というものだけは歓迎したいものですじゃ。

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Y田koyuki

この煮豆、みなさん大好きな缶詰なんですよね~。国民的な味がずっこけちゃう。林先生のご本むかーし読みました。
私もがいこくのお店のお姉さんが忘れられなくて、また会いに行きたいなと思うことしばしばです。

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はつき

りんぼう先生のこの本にも確か紹介されていたと思うんだけど、飯田橋のブリティッシュ・カウンシルに英国料理のレストランがあったはず。今度、ご一緒しませんか?
ちなみに、私は実はイギリスの大学院の通信課程をとっていたことがあるんですが(英語すっかり忘れたので言いたくないんだが)、サマースクールの寮の朝食は、毎朝こんなメニューでした。でも嫌いじゃなかったです~。

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スガ

はつきさんの知られざるキャリアがまたひとつ!
そうなんですよねー、ブリティッシュ・カウンシルに行くと諸々解決するかも! 行きましょう行きましょう。
はぁ、ロンドンに行きたい・・・

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