賛成の反対の反対ー!/映画「否定と肯定(原題 DENIAL)」

否定と肯定 ホロコーストの真実をめぐる闘い (ハーパーBOOKS)

あらすじはギンレイホールのサイトから。
ユダヤ人女性の歴史学者デボラ・E・リップシュタットは、ホロコースト否定論者であるイギリスの歴史家デイヴィッド・アーヴィングを自身の著書で非難していた。するとアーヴィングは名誉棄損でリップシュタットを提訴し異例の法廷対決が始まった… “ホロコースト“をめぐる法廷闘争を描いた緊迫の実話!

デボラさんはアメリカの学者で、アーヴィング氏からの挑戦状のような提訴を受ける。彼女は「戦ってやる!」と固く決意し、イギリスにわたり現地の弁護士集団に弁護を頼み、イギリス流の裁判を進めることになる。優秀な弁護団を抱えるものの、アメリカ女が感情に任せて勝ち勝負をズタズタにしたり粗相したりで不利な状況に自ら追い込んでしまうが、あることをきっかけに心を入れ替える。クライマックス直前、「えーそこでまさかの!」な大どんでん返しがまさかな人から繰り出され・・・・・

ハンナ・アーレントよりぐっとわかりやすい、努力・友情・勝利の作品。ですが、字幕をつくるのほんとうに大変だったと思います。骨の折れる仕事だったと思います。
ハンナ・アーレント(字幕版)

 

舞台は1995年から2000年くらいまで。イギリスの高級ホテル(多分、高級ホテル)の寝室の枕元にはソニー製のラジオ付き時計が置いてあり、弁護士事務所でみんなが覗き込むモニタはJVCのロゴ入。報道関係者が使う機材はソニー製。アメリカの女もエルメスのスカーフを巻き、みんなが肩が張ったカシミヤのコートを着て、男性は縁無しのやわらかいフォルムのメガネをしている時代。あぁこういう時代があったなーと、そして彼女が最後に着ていたジョギングウエアの謎の猫か牛のイラストが大変気になりました。

 

しかし原題が「Denial」とあって、邦題を「否定と肯定」としたのはどういうトンチの利かせ方なのか。「Gravity」とあった原題を「ゼロ・グラビティ」としたのと同罪ではないのか。なんでこう「うまいことやったつもり」な邦題に落ち着いたのか。

 

大人のしごとってこういうものだよねーと実感できるとてもよい映画でした。

レイシスト丸出しのセリフを、英国の名優ティモシー・スポールの口から聞くとかなりぞっとした。大変な差別主義者を演じてらっしゃる。しかし、ツイッタ等でそういうことを恥もなく口にしているのを一日一回はなんらかの形で目にしてたりするわけで、「よく生きる」というのは大変なことだなぁと考え込んだ次第。好き勝手なことをいうのが言論の自由、人を傷つけても無遠慮な発言をしても「それも自由」と思っているのであれば、まずはこの作品をみて、作品後半の主人公のセリフに耳を傾け、誰かを叩きのめさないと気がすまないような昨今の風潮を省みるきっかけになればいいと思いました。

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