ナチスがやってくる直前のプラハで暮らすユダヤ人パパ一家の戦前から戦後までのおはなし。
といっても、なんでしょう、このほのぼのと戦争をやり過ごしていく感じ。いや、もちろん全然ほのぼのとしていなくて読んでいるだけで涙が出るような胸が締め付けられる場面もあるのですが(『美しい鹿の死』『青い目のウサギたち』)、それ以上に「いやいや、パパン・・・それはなくってよ」と微笑ましくなってしまうお話も(『スゥエーデンのために働いて』『ハエ問題は解決済』『中部ヨーロッパで最も高価なもの』)。言うなれば、お話をぎゅっと約めた、プラハのリッチなおうちの『アンジェラの灰』、あるいは『じゃりン子チエ』です。
チェコの最近の人気作家さんは誰なんじゃろうと調べていってヒットしたのですが、よい短編集に出会えました。
作家のオタ・パヴェルは精神を病み、43歳の若さで突然の死を迎えてしまいます。こんなゆかいな物語を描く人の人生の結末がそんなことになるなんて。作家略歴をWikipediaからコピーしておきます。ご興味ありましたらぜひ。
オタ・パヴェル(Ota Pavel 本名 Otto Popper 1930年7月2日 プラハ – 1973年3月31日 プラハ)は、チェコの作家、ジャーナリスト、スポーツ・ライター。
ユダヤ系の商人レオ・ポッパーの家庭に生まれる。第二次世界大戦中、父と兄はナチスの強制収容所行きとなるが、オタは非ユダヤ系の母親とともに家庭に残る。父と兄は戦後無事に帰還する。
戦後、チェコスロヴァキア・ラジオ局のスポーツ記者として活動し、同行取材でアメリカ、フランス、スイス、ソ連などに滞在。
1964年のインスブルックオリンピックで取材中、精神的錯乱に陥り、入院生活を余儀なくされる。心臓発作により、43歳で他界している。