フェアじゃないトレード由来の服を着て/「ユニクロ潜入一年」横田 増生

著者がユニクロにアルバイトとして潜入し、その過酷な就労環境を暴き、また海外生産工場での違法労働っぷりを取材した渾身のルポ。「バイトしなくてもわかりそうなものじゃん」などと言わないで! 50代の男性が、身なりを整え、カジュアルファッションブランドにアルバイトとして採用されるというだけでも、かなりハードルが高いミッションだと思いませんか?

著者は2017年に、幕張のユニクロ(時給1000円・交通費支給なし) → 豊洲の時給のよいユニクロ(時給1150円) → 新宿のビックロ(時給1000円)で働くのですが、ビックロで開催された11月の創業感謝祭で燃え尽きます。この創業祭で柳井さんは各店舗に差し入れを送るのですが、それがばかうけアソート四十枚とガナー・ド・ボワイヤージュなどのお菓子とみかんだそうです。

 ばかうけアソート・・・
 ちびっこお楽しみ会みたい・・・
 
ばかうけは確かにおいしいお菓子ではありますけれど、Forbesの億万長者リストに名を連ねるような経営者がスタッフの士気高揚のために差し入れるには少々力不足のような。そしてあの長時間開店+来客数過多+激務の新宿東口のビックロで時給1000円というしみったれたお給金っぷり! まじで!? 本を読んでいくと、バイトさんの空き時間を1秒でも削るためにあらゆる努力をしている経営陣の様子が紹介されています。大変けちくさいし、他人を信用してないのがよく伝わってきます。

新宿東口ビックロの店員さんは最大400人ほどでうち外国人スタッフが約半分。ここはよく覗いてるお店なのでその実態はわたしも知っているつもり。確かに外国人店員さんが多いので「インバウンド対応で外国人のスタッフさんが多いのかな」と思っていたけど、この本を読む限り、ただの人手不足でそうしてるみたい。お向かいの伊勢丹が時給1300~1500円+交通費別ともなれば、みんなそっちに流れますやん。ちょっとしたマゾ体質の人でないと働けないのではないでしょうかどうでしょうか。

柳井一家でユニクロの株を43%持っているというのに、配当金だけで年100億柳井さんのポケットに入っているというのに、超しみったれおじさんじゃないですか! けちんぼ!!

 

それとは別に海外生産工場の話は読んでいてとても複雑な気持ちになった。ちょうどユニクロのファインメリノのVネックセーターを着ていた。このなめらかな薄手のニットの驚くような価格は、企業努力の賜物ではなくて、生産工場への無理難題をおっつけてることで成立してるのだ。

カンボジアの工場ではサービス残業たっぷりさせて月給162米ドル、日本円にして17,500円。月給が、17,500円。カンボジアの人件費があがったら次はどこで生産するのだろう。そうやって安いところ、安いところを探し歩いていく。その先になにが待っているかちびっこでもわかるではないですか。

そして現地の工場勤務者は掘っ立て小屋同然の家に家族5人で住み(その家の写真が乗っていたけど、ブルーシートで覆われたコンクリートの土間にしか見えなかった)、僅かな昇給を求め労働争議を起こせば解雇される。そういうひとたちの暮らしの上に成立している洋服をわたしたちは着ている。

その労働争議が起きた工場はユニクロとH&Mが契約していたそうですが、ユニクロは「めんどくせ」と契約を打ち切り、H&Mは環境改善に手を差し伸べて引き続き生産しているという。んもうユニクロ、そういうとこだぞ!

「昔に比べて服が安くなったよねえ(ほくほく)」などとしている場合じゃないのだ。誰かの手でニットミシンを使って編んでいるんだもの。ユニクロの「エクストラファインメリノウールのVネックセーター」を、同じ技術で同じ素材で20年前、10年前の経済状況で作ったらどんな価格で売ることになるのだろうか。これは自分自身の暮らしを見つめ直さないといけない事案です。

軋む社会—教育・仕事・若者の現在 (河出文庫)

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1 COMMENT

いち

うむ。
あたいも裕福じゃないけど、
ある程度ちゃんとした値段のものを買う。
同じ値段でこれ作れって言われたらやだなって
そういう仕事、人にやらせちゃいかんよね。

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