鳴く鹿と竜神様と麗人と/第15回奥川恒治の会 記念大会「一角仙人」

一角仙人 (能の絵本)

国立能楽堂で。「一角仙人」のあらすじです。

インドに住む額に角の生えた仙人(一角仙人)は、強い神通力で龍神を岩屋に閉じ込めてしまいます。日照りとなった国を憂い、国王は計略をめぐらします。命をうけた旋陀夫人が、色と酒で仙人の神通力を失わせると、龍神は岩屋より脱出し、雨を降らせます。
ハニートラップにまんまと掛かる仙人の滑稽を、大掛かりな舞台でお楽しみいただきます。

山奥でひっそり暮らしていた朴訥な男のもとに、「道に迷ってしまったの」絶世の美女がやってくる。「こんな山奥に! なんかいい匂いのするきれいな女が!!」、ドギマギしちゃう一角仙人! 
「だって、おれ、父さんが人間で、母さんが鹿だもん、頭に角が生えてるんだよ? なのにこのきれいな女の人は、俺と一緒に踊ってくれる。こんなに情熱的なステップで(能舞台なりに)、一緒に踊ってくれる。あぁどうしよう、なんだろ、これすごく幸せな気分・・・・」と盛り上がってきたところ、彼女に進められるがままにお酒を飲んでしまう。
すると一角仙人の神通力が解けてしまい、岩屋に封じ込められていた龍神様がババーンと登場、龍神様のお供の二人もズガーンと登場、なんとかもう一度封じ込めようとするがとき既に遅し、戦いに破れた一角仙人は山を去り、龍神様は国土に雨をもたらすのでした。
めでたしめでたし・・・って一角仙人の側に立ったら全然めでたくない!!!

 

シテは奥川恒治さんの一角仙人。額から角の生えた一角仙人のお面がすごくよかった。角は細く繊細なもので、表情は険しく孤独で悲しげ。本作が目指す「野卑で無粋で、人生でモテたことなんて一度もなかったでしょう?」というキャラクターの描き方とは異なった造形。こんなひとが実在したら、単に山暮らししている寡黙で渋い男ではないですかー、まぁシテとして見るには地味すぎるんですが。
一角仙人が着ている青い格子柄の着物も能装束とは思えない身近な柄でかわいらしかった。ブータンの人がよく着ている赤い格子柄の着物がありますが、あれの色違いではなかろうかという素朴な柄。そうかー、能装束の世界には、山奥で暮らす素朴な人には素朴な柄という常識があるのかもしれませんね。

国王の策略でやってくる旋陀夫人は鈴木啓吾さん。かわいらしくも華やかで豪華な衣装。従者の方の衣装も柄合わせに工夫されていて可愛らしかったです。

最後にババーンと登場する龍神様は、観世喜正さん! シテよりも派手ないでたちで存在感たっぷり。「あれ、もしかして今回のシテってこの龍神様だったのでは?」と錯覚してしまうくらいの派手さ! 金色のお面は、どこか魚類めいたものを思わせるつくりで(龍神様だからね!)、いままで見たことのないもの。能装束も華やか。光沢麗しい紺色の地に、金色の雷鎚と龍が織り込まれド派手な衣装、裾模様は同じ色で渦巻く雲。頭には『龍載』という、前から見るとモヒカン、横から見ると龍をかたどった被り物とわかるものを載せている。龍神様のお供の二人(どこのバンドのギターとボーカルかしらっていうくらいイケメン)も龍載も載せているけど、龍神様に比べると小さくて明らかに格下感が伝わってくる。とにかく、龍神様がでてきた瞬間は「キャー!スターよ!スターが登場したわ!!!」とときめいてしまう。

お囃子もノリノリで素晴らしく、舞台装置といい大きめ龍載といいきらびやかでド派手な衣装といい数々の美しい面といい、今回はいままでの能鑑賞で見たことのないものがたくさん見られましたよ。良いものを拝見しました。お招きいただきありがとうございました。
能楽師さんが主体のいわゆる「○○の会」は、参加する演者のみなさんの「こいつのために一肌脱いでやろうぜ!」という愛と熱意が満ち満ちていて格別です。みなさまも見る機会がありましたら、ぜひそういう会のものを~。

 

終演後は一緒に行った友人夫婦と、キャッシュオンデリバリーで昼間から飲酒できる千駄ヶ谷のエクセルシオールカフェへ。旦那さまが「えー、ドトールじゃーん」と明らかにがっかりした顔をしてらっしゃいましたが、千駄ヶ谷駅下のエクセルシオールカフェは、駅至近、テラス席が広く、天井高く、コロナ前から社会距離拡大戦略が図られているゆったり設計で、なおかつアルコール(飲むのも手を拭くのも)も常備、窓から見えるのは並木の緑という、ドトールのくせによくできた設計なのであります。

そこで白ワイン飲みながらキャッキャウフフとお能の話をしていましたら、さきほど能楽堂で見かけたご婦人4人組が到着。店内ぐるりと見回して、「あらー、席空いてないわねー空いてないのねー」と割と大きな声でアナウンスして出ていった。明らかに店内に居合わせた人々を不快にさせる話し方で、わたしたちも会話が止まった。大声でああいうふうにいえば誰かが席を譲ってくれると思ったのだろうか。譲ってくれるまで大声を出すつもりだったのかしら。

能楽堂で見かけたときは、上品そうなかわいらしいおばあちゃまたちであんなふうにわたしもなれたらいいななどと思ったのに! 騙したなー、よくも僕を騙したなー!

ああいうババアにはなるまい、大声でなにか言えば自分のわがままがまかり通ると信じ込んでいる様が顔からにじみ出てるような生き方はしたくない、若者に負けぬ俊敏さで何食わぬ顔で目当ての席を強奪するくらいのババアでい続けたいと思ったものですじゃ。どういうふうに年取っていくのかなーわたし・・・。

 

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