滅亡じゃなくって次のステージへ/『幼年期の終わり』

幼年期の終り (ハヤカワ文庫 SF (341))

「2001年宇宙の旅」のイギリスのSF作家アーサー・C・クラークの長編小説、1956年の作品。「『2001年宇宙の旅』のイギリスのSF作家アーサー・C・クラーク」という表現はとても大雑把なもので、アーサー・C・クラークが原作を書いて、スタンリー・キューブリックがそれをもとに映画を起こしたというわけではなく、実際は映画と同時進行で物語も書き進めていったらしいです。「夏への扉」を読んだあと「この作品を読んだ人は、こんな作品も読んでます」にこの作品が表示されていて、Kindle 版も出ていたのでそちらを購入してみた。訳者は福島正実さん(夏への扉もこの方でした)。読み終わってから、これって創元推理文庫の沼沢洽治さん訳とか、あるいは光文社古典新訳文庫の池田真紀子さん訳を読んだらだいぶ違った印象になるのかちらどうかちらと居ても立っても居られなくなったりしました。

あらすじはAMAZONから。

異星人の宇宙船が地球の主要都市上空に停滞してから五十年。その間、異星人は人類にその姿を見せることなく、見事に地球管理を行なった。だが、多くの謎があった。宇宙人の真の目的は? 人類の未来は?――巨匠が異星人とのファースト・コンタクトによって新たな道を歩みはじめる人類の姿を描きあげた傑作!

1956年にこの作品が発表され、この時代にこの作品を読んだ人たちが、この表現豊かな文章や言葉から思い描いた近未来の姿とはいったいどんなものだったのでしょう? 口ポカーンと、????とした人が多かったのではないのでしょうか。この作品を私が1990年代に読んでもやはり口ポカンとしたのではないかと思います。

物語の中で異星人は「オーバーロード」と地球人に呼ばれます、えぇそうです、ロードをも超える存在だと地球人は素直に直感的に認識し、彼らの庇護と監視が進み五十年の時が経過、地上に降りてきた異星人たちはにゃんとホニャララの姿をしていた! そのホニャララの姿の記述が福島正実訳だからか私のカンが鈍いからか、なんだかピンとこなくて第9地区のエビ星人の姿で登場してしまい、のちの読書の展開がもったりしたものになります。(*ノω・*)テヘ

第9地区 [DVD]

人類は姿を現したオーバーロードとともにかつて無い幸福な時代を過ごすことになります。戦争もなく、社会資本も充実し、世界中に栄養が行き渡り、労働に時間を奪われることもなく、何回も何回も大学に入り学び続けることができ、世界中を自分専用機で自由に飛び回ることができる、そんな夢のような黄金時代を迎えます。一人の美しく優秀な青年ジャンは、オーバーロードの母星に戻る船に潜り込むことに成功し、母星に無事到着し、現地オーバーロードと深い関わりを持つことになります。この青年が物語のクライマックスで登場するのですが、Wikipedia での記述を借りてきますと、

第三章 最後の世代 (オーバーロードの星からジャンは輸送船に載り地球へ戻った、しかし)彼を迎えたのは変わり果てた地球の姿であった。カレルレン(オーバーロード総監の名前)はジャンに知る限りの真相を語り、協力を要請する。やがて最後の時が来た。地球を脱出するオーバーロードの宇宙船に向って、ただ一人地球に残ったジャンは、地球の悲壮で華麗な滅亡の様子を実況する。

となります。このクライマックスの数ページはきらめくように美しく、じわっと涙が出てくるほど。そして実際、そのときはこのような変化を経るのだろうと静かに確信させるものであり、ここをWikipediaでは「滅亡」と編集されていますが、私にはそうは思えず、えぇ確かに地球はホニャララしてしまうのですが、作品のタイトルは「幼年期の終わり Childhood’s End」、まさに地球は幼年期を終え(この人類の文明の繁栄ですら、宇宙規模から見たら幼年期でしかなかった!)、次のステージに向かったのだ、と理解しました。

あぁそうかー、みんなこれを読んでガンダムを作って、それ見て育った人たちがエヴァンゲリオンを作ってきたのねー。知らなかった、私、全然知らなかった!!! というか、この年令で、この時代に読めて私にはちょうどよかったのかもしれない! 光文社文庫版も近いうちに手を出してみます。SF好きな人も、物語が好きな人も楽しめる作品ではないかと思います。
この流れで次は何を読めばいいのかしらー。

正月に甥っ子と「パシフィック・リム」をDVDで見たのだけど、「なんだよこれ、エヴァのパクリじゃん」と五回くらい言うので、それではDVDを変えましょうかと提案しますと、「いいよもうちょっと見てみる」と数分経過した後、香港戦でピクリとも動かなくなったのですから、えぇもうそりゃー中学生のテレビ画面への魂持ってかれ具合などこんなもんざんすよ。鑑賞後、「やっぱりエヴァのパクリだね」とおっしゃいましたが、えぇ。まぁそれしか見たこと無いってことなんだろうけど。母親は「空のしたで戦えば綺麗でいいのにー、なんで夜戦うの? 夜行性?」と言ってました、萌えました。

4 COMMENTS

カヲル

「幼年期の終わり」は中学生の時に読んで凄くショックでしたね。人類が新しい種族に変わるというSFテーマはガンダムやイデオンに少なからず影響を与えてます。当時元ネタ探しにSFを読み漁っていた中でも特に印象的でしたね。

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ukasuga

スパムコメントがひどかったのでコメント欄の仕様を変えましたのー。

わー、これを中学生の頃に読んだのですね。いまとなってははぁはぁなるほど、というお話だと思いますが、当時はショックを覚えられたでしょうね。察します・・・ラストシーンが印象的でした。彼はそのために宇宙に出されたのでしょうね・・・あぁ・・・かなり衝撃の作品でした。出会えてよかったです。次はなにを読めばいいのかしらー。

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カヲル

ハヤカワのSFなら「アイアムレジェンド」(原作の方)とか、「盗まれた町」、「終わりなき戦い」今度、映画やる「エンダーのゲーム」もいいですよ。

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