田辺聖子「夢のように日は過ぎて」

夢のように日は過ぎて (新潮文庫)
あらすじはAmazonから。
会社勤めのデザイナーとしてキャリアを積んだ芦村タヨリさんは、今が娘盛り。日本酒で作った自家製化粧水でお肌はピカピカ、相手の男次第でハタチから三十五まで幅広く年齢のサバも読めます。ちょっぴり落ち込んだりしても、「アラヨッ」の掛け声もろとも、優雅に軽やかにピンチを乗りこえてしまう、その素敵に元気な独身生活の秘訣とは? ハイミスの魅力あふれる連作長編小説。

35歳のハイミスのキャリアウーマンが、二十歳にサバ読むってどういうことだろう。そんなことする必要があるの? いろいろな男の子をとっかえひっかえして遊んでいるんだけど、ものすごい渋ちんの若造だったり、ホテル代立て替えておいてやーという営業マンだったり、結婚前に相手の女性とはエッチできないので代わりに呼び出されたり、割りと散々な目に遭ってる。恋愛も仕事も人生も楽しんでいるわ、と彼女は胸を張っているんだけど、誰にも本気に大切に相手されてはいない。読んでて時折悲しくなった。まぁ、アレですな、SEX AND THE CITY シーズン1、ですな。

物語は1985年前後が舞台らしいです。女性数人集まって旅の話をしているときのくだりが面白かった。ちょっと転載させてもらう。

パリの一流ホテルへ泊めるというふれこみのツアーで、レストランも何もかも一流、というハイグレードをうたっていたから参加したのに、それはたしかに一流ホテルではあったが、ホテルへ着くなり、
「すんません、出入りは必らず、こちらからお願いします」
と添乗員が私たちを集めて注意した。
「こっちのほうがタクシーに乗るのに便利ですし、賑やかな通りまで近いですし」
などというが、それは裏手の入り口、つまり裏口である。
正面玄関から、日本人団体客は出入りさせてくれなかったのだ。ロビーも使ってはいけないという。そこは古いたてもので由緒ありげな美しい家具調度に飾られ、威厳のある紳士淑女が出入りしていたから、私はたいそう嬉しい思いをしたのだが、禁止事項を聞いているうちに怒りのあまり、卒倒しそうになった。
日本人の女性団体旅行客を、彼奴らはバカにしてるのだ!

(中略)

更に許せないのはショッピングツアーであった。私たち日本女の一行が有名ブランドの店へ入ったとき、それを迎えた店員の目つきときたら、まさに
(一撃必殺)
というような、物凄い目つきだった。それは、(あ、またアホらがきよった)というような、ゆとりのある気分ではなかったのだ。
(死ね、アホら、金さえ出しゃええ、というもんやないぞっ)
という触れれば切れそうなド迫力が感じられたのである。
(うぬらが手にするような格と違うっ。このブランドは!)
という気分がありありと感じられ、軽蔑、憫笑、嫌悪、それらが全店くまなく、どす黒い煙のように立ち込めているのであった。
金髪の若い女店員も、半白のおばん店員も、唇とマニキュアの真紅が目立つ、皺だらけの老女店員もみな、唇をゆがめ、眼に冷笑をたたえ、反感をむきだしにして迎えるのだ。それなのに日本女のグループは、そういう反撥の気分をものともせず、どーっと店内になだれこみ、人を押しのけて陳列ケースにしがみつき、
「あのポーチを十個ください」「このバッグ五つ、あの財布二十個」「ここの、全部!」
などと声を限りに叫んでいるのであった。

うわぁ・・・。これ、団体旅行はさておき、ご本人か身近な人の実体験なんだろうなぁ。その頃の団体旅行はそんなものだったの? 日本はバブル前夜ですが、みなさんお金持ってらっしゃる、本当にこういう観光客が多かったんでしょうなぁ。しかしこの風景って、今日も銀座のあちこちでささやかれている「いつかきた道」のことですね。まぁそういうときは、少年ナイフの「Baggs」を聞いたりするといいんじゃないかな。

まぁ、ほんと、くどいようですが、SEX AND THE CITY シーズン1のようなお話だったな、ということで。でも、35歳のときが一番楽しかったというのは同意する。うん、私もとても楽しかった。稼いだお金はぜーんぶ胃袋と着るものに変えて満足してた。その後猛省して貯金派に切り替わるのだが、なんなの日経平均19000円って!

Sex and the City Season1 プティスリム [DVD]

これ、モニタの脇においてバシャバシャやってます。花粉症がひどくてひどくてなぜか顔中の水分が抜けていっているような気がして。目の周りの痒みを抑えるためにも使ってます。また今年は花粉症の薬が効きすぎたりもしていて頭痛も重いし。すごいねぇ、今年の花粉は。
ウテナ モイスチャーアストリン (さっぱり化粧水) 155mL

2 COMMENTS

ふなき

おお、田辺聖子さんが続いてますね!!
今回の本、以前読んだ時に、女の価値ほぼイコール若さであり、結婚(の相手)だった時代、仕事での実績、キャリア、蓄えてきた資産については世間が何の価値も見出してくれない時代(「オンナがエラくなってどうすんの」「オンナがお金ためてどうすんの」「オトコに相手にされないから仕事やお金に走りよんねん」etc)という時代に対する、ハイミス達の挑戦状的なものではないかと思っただよ。傷を負いながら前進してる感じだよね。
1985年はバブル前夜(プラザ合意がこの年ですよ!!)、男女雇用機会均等法施行の前年なんですね。私はこの翌年に大学に入り、昼間は仕事、夜は学校という二足のわらじの中で面白おかしく過ごしていました(リアルタイム大阪!!)

ところで、評伝って読むかい?電子書籍だと手に入らないかもしれないけど、田辺聖子さんの手による吉屋信子の評伝「秋ともし机の上の幾山河」がとってもオススメなんですが。

花粉症、今年は鼻より眼に来てる感じです。ご自愛くださいませ。

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ukasuga

うーん、時代背景も事情もよくわかるんだけど、なんでサバ読んだのかなー。「あなたよりか弱い存在なのよー」って振る舞いたかったのかな? 

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