雨か蛇か御影六甲軽井沢/田辺聖子「私的生活」「苺をつぶしながら」

言い寄る

私的生活 (講談社文庫)

苺をつぶしながら (講談社文庫)

装丁がかわいらしいですよね。本をがばっと広げるとわかりますが、はんかちをどーんと配したデザインなんですよね。ハンカチ写真は、文化出版局さんの「懐かしいハンカチ」から。

懐かしいハンカチ

田辺聖子の「言い寄る」を読んでから、これが三部作と知り、主人公・乃里子の財閥の御曹司との結婚生活を描いた「私的生活」、離婚後、女としての自由を勝ち取る(ていうか、勝ち取った)日々を高らかに歌いあげるように描いた「苺をつぶしながら」を週末、一気に。

第二部では御曹司の家が持つ六甲の別荘が登場し、第三部作では軽井沢の別荘地が登場する。六甲の別荘地は人を招くための場所として描かれ、豪壮だったり瀟洒だったりするんだが、別荘ごとを大きく樹木で区切り他者との交流をかたくなに遠慮しているように思える、ように描かれている。第三部では、商売が軌道に乗ってきた乃里子がビル二つもってる謎のマダムと軽井沢の万平ホテルに避暑に行く、そこで大阪での知り合いに会い、あろうことかその翌日には東京に居を構えた前の夫とも会ってしまう。

そんなポンポン人と会うものなんかい、マンガや小説じゃあるまいし、と突っ込みたくなるところだけど、軽井沢ってどうもそういうところらしい。句会のマダムたちが昨年の夏「旧軽に行ったら、●●さんと出会って」「そうそう、そのあとみんなで●●に行ったのよねー」「うふふ、軽井沢って狭いのよねー」って言ってたし。そういった土地の違いが面白く表現されていたと思います、土地の作り方の違いというかなんというか。

で、離婚する前、乃里子さんの元旦那さんが「君にいくらかかっとるか知ってますか? ここのデパートだけで一年で五百万ですわ」という言い放つシーンがある。おぉ、大阪豆ゴハンで、大清水さんが「一年で3000万嫁に使われました」と言ってたアレですな、本当に豪壮な金の使い方をするものですな! まぁそんなに買い物しなくてもいいよねぇ、と思うんだけど、そういう立場になると買い物しまくっちゃうのかもしれないねぇ。今がそういうゴージャスな服を着なくちゃいけない時代じゃなくてよかった、そんな時代にい合わせていたら大変だったわ。まぁ「大人スタイルの上質カジュアル」ってのも実は金がかかるもんですが。

乃里子が万平ホテルに泊まるのだって、楽天トラベルで「このプランだと窓から浅間山が見える眺望確約だわ」「こっちはレイトチェックアウトができる」「こっちは高いがレンタカーがついてくる」「こっちは安いプランだと思ったら、夕食抜きかい!」などと何ページもタブを開いてあぁだこうだと比べるヒマもなく、すっと宿泊予約して、すっと泊まって、チェックアウトの時にはフロントで出された伝票をちらっと見て、「ちょっと高すぎるんじゃない?」とか考えるヒマもなく「了解、こんな料金になるのねー」と黙って支払うのよね。どちらが幸せな消費なんじゃろうか。悩む時間が少ないほうが幸せだったりするんじゃろうか。

三部作を通じての感想は、私が子供だった時代の大人たちはずいぶんと楽しそうで、エネルギッシュでよいですなぁ。右肩上がりの真っ最中だったのよね、この頃はね、第一部の「言い寄る」は1974年出版ですもの。「言い寄る」のフワフワした女の子の物語で読むのを止めてもよかったのかなーと思ったりもしてますが、うん、どうなんでしょうかなぁ。

週末は会津若松に吟行旅行に行ってきました。帰りの新幹線で隣り合わせたマダムとムッシュに「いま、田辺聖子読んでますの」と話したら「田辺聖子は『ひねくれ一茶』がすごくいい。これはすぐにでも読むといいですよ」とお二人から強く進められました。これで吉川英治文学賞を受賞するのですよね、メモメモ。早速読んでみましょう。

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